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【特別対談Vol.1】Calbee×ITOKI 2人の社長に聞く「これからのオフィスのあり方」

オフィスで働く価値は、どこにあるのでしょうか-。多くの人がコロナ禍でモバイルワークのメリットを感じた今、オフィスの意義が問われています。とはいえ、モバイルワークをする中で「リアルの良さ」を再認識した人も多いはず。その良さを定義するなら、一体どんな表現になるのでしょう。

そんなテーマで対談したのは、株式会社イトーキの平井嘉朗社長と、カルビーで社長を務める伊藤秀二。イトーキ様はオフィス関連事業を手掛ける企業で、7月から着工するカルビーの新オフィスに携わっていただいています。

イトーキ様は、2018年に本社を移転し、働く場所やスタイルを個々が自由に選択できるオフィスを実現してきました。一方、カルビーもフリーアドレスやモバイルワークの推進など、人財が能力をいかんなく発揮できる環境づくりを目指しています。両社の働き方改革に対する社員の戸惑いやコロナ禍での働き方を振り返り、2人は今後「新しい価値を作るためにオフィスが重要になる」と語ります。

<対談のダイジェスト動画>


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平井嘉朗(写真中央)
株式会社イトーキ 代表取締役社長
伊藤秀二(写真右)
カルビー株式会社 代表取締役社長 兼 CEO
武田雅子<ファシリテーター>(写真左)
カルビー株式会社 常務執行役員 CHRO 兼 人事総務本部長

自由な働き方が生み出す高いパフォーマンス

武田:本日はこれからのオフィスのあり方についてぜひお話しいただければと思います。まずはこのコロナ禍で、モバイルワークが普及しましたよね。その変化について、お二人はどのようにご覧になっていますか?

伊藤:カルビーでは、2020年7月から、モバイルワークの標準化やフルフレックスタイムの導入など、新しい働き方「Calbee New Workstyle」をスタートしました。それ以前から、多様な働き方を支える制度は整えていたのですが、実のところモバイルワークは定着したとは言い難い状況でした。
出社して席に着くと「仕事をしている」感覚になるという古い概念が定着を妨げる一因になっていたと思います。また、部下をオフィスという“箱”の中に入れ、仕事の状況を逐一チェックしたいタイプの上司からは当然抵抗もありました。
ただ、そういった管理から解放しなければ、これからの時代、新しい付加価値は生み出せないと思います。社員一人ひとりがどういう環境で仕事をしたいか、パフォーマンスを最大にできる場所や時間を考えて、自ら選ばないと良い働き方はできないのではないかと

伊藤さん

平井:とても共感します。私たちの考えも「自己裁量を与えることが最大のパフォーマンスにつながる」ということに尽きます。ただ一方で、社員を管理することで仕事をした気になってしまう人もいる。このギャップをどう解消すべきか、以前から考えていました。
そうして2年半前に生まれたのが、このオフィス「ITOKI TOKYO XORK(イトーキ・トウキョウ・ゾーク)」です。XORKという名称は「次の働き方」を意味していて、WORKを進化させることから、アルファベットの「W」に続く「X」と掛け合わせた造語なんです。

「ITOKI TOKYO XORK」とは
階層や組織、チームに基づいたワークプレイスで働くのではなく、個々のワーカーが自分の働き方や、その時々の作業に合わせて、最適な空間を選択できるワークエリアが特徴。想定されるワーカーの活動を10個に分類し、それぞれの活動に対応した空間を用意している。

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伊藤:先ほどXORKをご案内いただきましたが、素晴らしかったです。イトーキさんには、カルビーの新オフィス設計に携わっていただいて、いよいよ工事が始まるのですが、XORKを見ているうちに期待がさらに高まってきました。

平井:ありがとうございます。ただ、XORKを作ったとき、決して喜ぶ声ばかりではなかったんです。ここは自由な働き方がコンセプトですが、その自由を手に入れて喜んだ社員は、私の感覚では1〜2割でしたね。残りの社員は、きっと戸惑っていたと思います。

伊藤:戸惑いの方が多かったんですか?

平井:はい。なぜなら、ここでは自分がどの時間にどの空間で誰と仕事をするか、一人ひとりが毎日デザインしなければなりません。朝1時間は1人で集中する、次の1時間は誰かと2人でアイデア出しをする、夕方は大人数で会議するなど。これは簡単なようで難しくて、みんなこれだけの種類の空間がある中で、どこで仕事をするか毎日考えることに慣れていなかったのです。だから戸惑った。
ただ、2018年の移転から1年経ち、社員もだいぶ慣れてきた頃に、コロナ禍でモバイルワークが増えていきました。すると社員は、自宅をXORKに用意された空間の延長として捉えるようになったんですね。ワーク空間の選択肢のひとつとして。その結果、抵抗なくモバイルワークに対応できましたし、今に至るまで、各々が最適な仕事空間を選ぶ習慣を続けられたと思います。

平井社長

働き方の選択肢を増やすことは、社員のトレーニングになる

武田:イトーキさんの「XORK Style」も「Calbee New Workstyle」も、社員に自己裁量や自由を与える点が共通していますよね。それはマネジメントのあり方にもつながると思うのですが、私が「Calbee New Workstyle」を進める中で印象的だったのは、伊藤さんが「性善説マネジメントをしなければいけない」と言ったことでした。
トップの立場から「多少失敗してもいいから、人の可能性を信じてマネジメントをしていこう」と言い切ってくれたことで、人事部門としては大変助けられました。どうしても部下を管理したい人はゼロではないので、反対の声もあります。そこでトップが言い切ってくれると前に進みやすかったんです。

武田さん

伊藤:新しい価値を作ったり、旧来のものを壊したりしないと、会社は変わっていきませんから。そういう動きができる人を増やすためには、管理型のマネジメントは向かないと思うんです。

平井:その意味で、働き方や働く場所を自分で選ぶのは、ある種のトレーニングのように感じています。伊藤さんがおっしゃったような“新しい価値”を生むには、上からの指示で動いてきた世界から変わらなければいけない。自分で考えて行動できる、そういう人を増やさないといけません。そこで、与えられた場所で与えられた仕事をする習慣から脱して、一人ひとりが仕事場や業務を選択するようにしていく。日々そういう思考を繰り返すことは、“新しい価値”を生む人を増やすことにつながると思うのです。

伊藤:不思議なもので、細かい管理、いわゆるマイクロマネジメントをするほど、部下は上司に言われた範囲の中で「100点で返そう」という思考になってくるんですよね。そして上司の評価基準も「自分の指示の範囲の中でどれだけ足りなかったか」という減点部分に目が行ってしまう。
でも仕事って本来はもっと冒険だらけで「40点ばかりだけど、チャレンジを続ける中で、ある日120点が生まれる」というような世界もあっていいと思うんですよね。失敗の中から新しいものを生み出すといった思考になれば、みんながもっとアクティブに挑戦できるはずです。

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平井:仕事や発想の自由度をあげるために、働く場所を自由にする。そう考えるとよいのではないでしょうか。モバイルワークも、選択肢を増やして自由度をあげる意味があるわけで、リモートとリアルの価値を社員が考えて、自分のベストな環境を探すのが大切だと思います。

オフィスは、他者との「信頼」という土壌を作る場所になる

武田:リモートとリアルの価値という言葉が出ましたが、コロナ禍でモバイルワークが普及したからこそ、今後はリアルコミュニケーションの価値が問われると思います。それはオフィスの価値にも通じると思うのですが、どう考えていますか?

平井:リアルの価値やオフィスの価値を総称するならば、私は「関係性の醸成」だと思うんですね。
個人と個人、あるいは個人と企業でも構いません。会ったこともない人や企業が信頼関係を作るために、リアルがあるのだと。確かにオンラインでもつながれますが、信頼関係をオンラインで築くのは簡単ではない。本質的な人となりを知ったり、共感したり、熱量を感じたり。良い意味で相手の本質を見抜くのは、リアルだと思うのです。

伊藤:本当にそう思いますね。初めての商談がオンラインだと難易度が上がります。もともとリアルで関係のあった相手ならスムーズにいくのですが。

平井:そうですよね。お互いが知り合うには、たとえるなら「信頼」という土壌が必要で、その土壌があるからこそ、オンラインで会話しても関係性という木々が育っていきます。もし土壌がないままオンラインでやろうとすると、会話はできても、実は木々がやせ細っていくのではないでしょうか。この土壌づくりこそが、リアルの価値だと思うんですね。

伊藤:さらにリアルは、たくさんの人が集まって、混ざり合って、さまざまな意見が出てくる場でもあると思います。これからのオフィスは、仕事をする場というより、コミュニケーションに特化した場になっていくかもしれません。私たちの新オフィスもコミュニケーションを重視した「あつまりたい“空間”」を目指していて、社内だけでなく、社外からも人が交わる場になればいいと思っています。

オフィスリニューアル差し替え

新オフィスのイメージ図

平井:そうですね。オフィスは今までの業務中心のあり方ではなく、他社との混ざり合いも含めてコミュニケーションで新しいものを生み出す空間になっていくでしょう。実はそれを強く感じたのが、カルビーさんとの「Open Working Project」なのです。

「Open Working Project」とは
イトーキ様とカルビーが「働くを愉しむ人づくり」「明日の働くを自らデザインする」というコンセプトのもと立ち上げたオフィスシェアの取り組み。両社の社員が、約2ヶ月にわたり、お互いの職場を行き来しワークショップやイベント、自分自身の振り返り(内省)を実践しながら働いた実験的な取り組み。

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平井:まだパイロット版の取り組みですが、カルビーの社員さんといわゆる“他流試合”をした結果、たとえば「Calbee New Workstyle」に共感したイトーキの社員が、数人で弊社の環境改善プロジェクトをスタートさせるなど、「働く」に対してポジティブな変化が出ています。
見知らぬ同士が交流して関係性の土壌を作ることで、新しい何かが生まれます。そのためには、リアルな空間がなくてはいけません。オフィスの価値はここにあります。これからのオフィスのあり方を考える上で、大きなテーマになっていくのではないでしょうか。

伊藤:そうですね。新しい価値・イノベーションを生むために「異業種コラボレーション」の機会も広げていきたいと考えています。他社の社員との交流からこんな新しいことができそうとか。オフィスでそんなチャンスを作れると、さらに面白い仕事が増えるでしょう。ぜひ、私たちの新オフィスも、そんな空間にできたらと思います。また、今日のようにいろいろとお話しできたらいいですね。こういったコミュニケーションが、新しいアイデアにつながるかもしれませんから。




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