見出し画像

研究開発者の仕事観【社内報より『カルビトの流儀#02』】

カルビーの社内報は1960年に創刊され、現在に至るまで60年以上にわたり発行されています。「かっぱかっぽ」からスタートし、「かるびー」「CALBEE」などと名前を変え、グループ報となった今は社内の連帯感を一層深め、永遠に幸せの輪がつながっていけばという想いを込めた「Loop」という名前です。その中の1つのコーナー「カルビトの流儀」は、仕事上でのほろ苦い経験を通じて得た気づきを基に個人の仕事観を紹介しています。(ちなみにカルビトとは、カルビーグループで働く人のことです)

この「カルビトの流儀」をnoteで公開していきます。

今回は、「じゃがりこ」の開発に10年以上携わっている研究開発者です。

画像1

尋木 勲(たつのき いさお)
カルビー株式会社 研究開発本部 開発4部 部長
2001年に入社しポテトチップス製造課に配属される。その後営業を経験したのち2005年に研究開発本部へ異動となり「じゃがりこ」の開発担当に。2018年より現職。
好きな本は、「日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ」(森下典子著/新潮文庫)。仕事に対する考え方をホンのちょっと変えてくれた1冊。

―最初の配属は工場 転機はトイレから

私の代の新入社員の中で現場(工場)配属になったのは私だけでした。同期はだいたい営業や物流やマーケティング部門への配属で、そのときは少しだけ「どうして?」と思った気がします。でも、面白いかもという気持ちのほうが強かったですね。当時は滋賀工場といいましたが、現在の湖南工場での勤務がスタートしました。

2年経ったある日、工場の食堂へ向かう途中でトイレに立ち寄ると、当時の近畿エリアの事業部長と一緒になり、「たっちゃんどないですか?」と声をかけられたので、「元気にやっていますよ」と答えると、「営業どないですか?」と聞かれたので「おもしろいと思いますよ」と。このやり取りの1ヵ月後には営業へ異動していました(笑)。この事業部長が工場に顔を出されたときに、よく声をかけていただいていたのですが、今振り返ると当時はこうやって人事が決まっていったのかなと思います。

近畿エリアの営業では、神戸、大阪、京都、滋賀の卸店やスーパーマーケットなどを担当していました。

2005年に「じゃがりこ」の開発部署で産休に入る人の代わりを1人探していると耳にしました。そして、なんと近畿で営業だった私に白羽の矢が立ったのです。

思い返すと工場勤務時代のエピソードが理由だったかもしれません。滋賀工場にいた私はポテトチップスの製造オペレーションで気になったことがあり、夜行バスで新宇都宮工場(栃木県)まで行き現場を見せてもらったことがありました。周りからは「若手社員なのにそこまでする変わった人」と言われていました。このエピソードが「じゃがりこ」の商品開発者の耳にも入っていたようです。滋賀工場でこの「じゃがりこ」開発者にお会いしたときに「見る人は見ているから、がんばって」と声をかけられたのを覚えています。

大学では機械工学を専攻していたので食品の開発をするのは初めてでしたが、自分が携わった商品が世に出るのはとてもうれしく、おもしろい仕事だと思いました。

画像2

―いきなりの試練

2005年、「じゃがりこ」の開発担当となってすぐに大きな課題と直面しました。それは、「じゃがりこ チーズ」のチーズ粒が無いというお客様からのご指摘でした。工場へ行き、製造ラインを確認しましたが、原因は分からずで…。製造過程では確かにチーズを入れているのに、仕上がると形が認識できなくなってしまうのです。加熱しても溶けないチーズのはずなのに…。何度も工場に足を運んで考えたのですが、なかなか解決策が見つからずに数ヵ月が過ぎました。

じゃがりこチーズ

ある日、いつものようにこの問題と格闘していると、「チーズが溶けるというのは、熱がかかって起きると短絡的に思っていないか?」という疑問がふいに浮かびました。「溶けるとはどういうことか?」を具体的な言葉に言い換えて落とし込んでいくと、熱だけではない他の原因があるのではないかとの仮説に行きつきました。そこからチーズそのものを改良した結果、形が残るようになったのです。

思い込みは、実際には何かしらの理由があって起きていることも、気が付かず見落としてしまいます。問題の原点に返って考えることで、最初は気付いていなかったところに解決の糸口は見えてきます。

壁に突き当たると、四六時中ずっと考えていますね。考え続けていると、普通なら見逃してしまうような出来事に違和感を覚えます。その瞬間のために常に意識していることが重要だと思います。

―同じ景色を見ていても、見ているものが違う

昔の私は議論になっても一歩も引かない頑固者でした。自分が一番そのことについて考えているのだからと。そんなあるとき、テレビで人気バンドの方がコメントするのを見て、なるほどと思ったことがありました。

「同じ景色を見ていても、人によって視界に入ってくるものは違う。自分の目に入ってきたのはロックやパンクだった。他の人は素通りしていたかもしれない。どこに引っ掛かるかは人それぞれだ」と。

人によって見え方が違うし、自分が素通りしたことを他の人はキャッチしているかもですよね。

このことに気付いてからは、自分の考えなんて大したことないと思うようになりました。相手の考え方を尊重するようになって、昔より丸くなったとよく言われます(笑)。

画像4

―今後の展望

現在はマネジメントとしてブランドを成長させていくために関係する部署と目標を共有しながら、メンバーと一緒に実現させていくのが仕事です。チームの方針をメンバーが理解して実現に向けて動き出している姿を見るとワクワクします。たとえアウトプットが想像と違っても、方向性さえズレていなければ問題ないですね。不思議と目指す方向に向かっていくものです。

今掲げている目標は、「miino(ミーノ)」を50億円ブランドにすることと、スナック棚以外にカルビー商品の棚をつくることです。店に100人お客様がいたら菓子売り場に来るのは5人かもしれない。そうなると95人はカルビー商品と出会っていないことになります。この95人とカルビー商品が出会える場を創造することなんじゃないかなと思っています。

miino そら豆しお味



カルビーグループの社内報から飛び出した「カルビトの流儀」はいかがでしたか? 次回も楽しみにしていてくださいね!

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!次の記事もお楽しみに