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「じゃがりこ」が愛され続ける理由(ワケ)には時代に合わせたファンコミュニケーションがあった!

「じゃがりこ」は、ファンとのコミュニケーションを大切にしてきたブランドです。発売当時に話題となった独特のリズムで「じゃがりこ」を食べるCMから始まり、手書きのお手紙、入試に合格したファンが集う「それいけ!じゃがり校」(2021年3月に閉校)、「じゃがりこ」を人にあげる行為である「あげりこ」のSNS施策など、時代とともに進化を遂げてきました。

今回は、そんな「じゃがりこ」のファンコミュニケーションの変遷と、これからのビジョンについて、旧担当者と現担当者のお二人にうかがいます。

篠谷 佳菜子(しのたに かなこ):旧じゃがりこ担当
カルビー株式会社 スペシャリテ統括推進本部 企画・戦略部 MD・企画課 課長
2001年4月入社。2002年よりマーケティング本部で「ポテトチップス」「じゃがりこ」「サッポロポテト」などの企画に携わる。2023年より現職。

谷澤 渓介(たにさわ けいすけ):現じゃがりこ担当
カルビー株式会社 マーケティング本部 素材スナック部 じゃがりこチーム ブランドマネジャー
2016年10月入社。「カルビーポテトチップス」ブランドのマーケティングを担当後、2020年4月にじゃがりこチームに異動。 2022年4月より現職。


「じゃがりこ」のファンコミュニケーションの始まり

──じゃがりこのファンコミュニケーションが始まったきっかけは何だったのでしょうか?

篠谷:「じゃがりこ」発売当初、開発者はお客様の反応が気になったので、いろんな形で情報収集していたそうです。例えば、「じゃがりこ」の前身商品「じゃがスティック」のテスト販売品にも 、はがきアンケートを付けたりしていました。

そんな時、広報部門にファンレターが届いていることを知った開発者は、ファンレターを見せてほしいと頼んだそうです。お手紙の内容は、「初めての食感でおいしいです」といった感想や、「つわりで食べられないのに、じゃがりこは食べられました。じゃがりこ、ありがとう」といった嬉しいお声がたくさんあったようです。

当時はほとんどが手書きのファンレターで、開発者も読むのが楽しく、内容によってはお答えしたい、返信したいという思いがつのってきました。当時の広報責任者に返信したいと相談したところ、「手書きには手書きの方が良いのでは?」とアドバイスをもらい、手書きで返信することになったそうです。

実際の手紙
実際の手紙

私も担当していたときはもちろんお手紙を書きました。月に数十件のお手紙を受け取っていたこともあり、まとめて書いた日は何時間もペンを持ち続け、終わったら腕がプルプルするなんてこともありましたが、 楽しい時間でもありました。

また、「じゃがりこ」のフタがほしいという要望が多かったので、ノベルティとしてつくってからは専用のフタを同封しました。

谷澤:「じゃがりこ」のフタって、結構前からつくられていたのですね!

篠谷:そうなんですよ。今みたいに取り出し口は付いていなくて、ただの丸いフタでしたけどね。フタも進化しました。

取り出し口のない初期のフタ
じゃがりこのフタ
現在のフタ

──お手紙を手書きすることに反対意見はなかったのですか?

篠谷:効率化のためにプリントしたお手紙にしたいという意見もありましたが、開発者は、お客様一人ひとりに手書きで返信することにこだわっていました。折衷案として、定型文は印刷し、下にフリーコメントを書き添えるようになりました。

お客様へのお手紙には、専用デザインの便箋を使っていて、「じゃがりこ」から手紙が返ってきたことを喜ぶファンの声もあり、コミュニケーションを大切にしている姿勢が伝わっていたのだと思います。

現在のオリジナル便箋と封筒
現在のオリジナル便箋と封筒

「それいけ!じゃがり校」でファンとの共創

──お手紙の後はどのようなコミュニケーションに移っていきましたか?

篠谷:中部エリアで「じゃがりこ探偵団」という、「じゃがりこ」を熱烈に愛するお客様のためのファンクラブが発足したのです。新商品を発売1週間前に送って感想をいただいたり、イベントの開催や会報誌の発行などを行い、ファンとのリアルで双方向なコミュニケーションを取っていました。

ファンクラブの方々には、新商品の"口コミ"をミッションとして、活動していただきました。

インターネットが普及していった時代ですので、それをWEB上で展開して、全国のよりたくさんの方と双方向コミュニケーションを取りたいということになり2007年2月にスタートしたのが「それいけ!じゃがり校」(以下、じゃがり校)です。

それいけ!じゃがり校
それいけ!じゃがり校

──「それいけ!じゃがり校」とはどのようなものですか?

篠谷:「じゃがりこ」ファンが集まるファンサイトなんですけど、学校に見立てて毎年生徒を募集し「入試」を経て、合格した方だけが4月に入学できます。「じゃがりこ」担当者による朝礼(ブログ)やホームルーム、貯めたポイントをじゃがりこグッズに交換ができる「購買部」もありました。3年間で卒業するというのも、学校と同じです。


じゃがり校の購買部
じゃがり校の購買部

開校当初は、コンテンツ数が限られていたにもかかわらず、毎日登校(ログイン)してくださるコアなファンも多くいらっしゃいました。いろいろお話しする中で、みなさん「じゃがりこのことが好きで、もっとじゃがりこのために役に立ちたい!」と思っているのがひしひしと伝わってきました

朝礼で新商品の発売を告知すると、みなさんコメントで「買いました!」「食べました!」「近くに売っていません!」など、すぐにいろいろな声を聞かせてくださいました。そこで、じゃがり校にアンケートシステムをつくれば、もっと気軽に生徒さんたちの意見を聞けるだろうとスタートしたのが「カフェテりこ」(2007年8月)でした。カフェテリアでお茶をしながら語らうイメージですね。

また、「じゃがり校でやりたいこと」を聞いていくと、「新商品をつくりたい」という声があがり、それを実現したのが「新商品開発プロジェクト」でした。味、キャラクター、パッケージデザイン、ダジャレ、プロモーション方法までもじゃがり校生から募集し、商品を開発します。みんなでじっくり考えて、つくっただけあって「すっごくおいしい!」というご意見が多数で、想いを込めて一緒に商品をつくりあげると、よりおいしく感じていただけるのだなということにも感動しました。

ファンとの共創第1弾は「じゃがりこ カルボナーラ味」2009年2月発売
ファンとの共創第1弾は「じゃがりこ カルボナーラ味」2009年2月発売

「じゃがりこ」が大好きなじゃがり校生に協力してもらい、おいしい「じゃがりこ」を世に送り出し、宣伝してもらうことで、「じゃがりこブランド」がもっと元気になっていきました。そして、もっともっと「じゃがりこ」を好きになってもらう。
  
「マーケティングツール」としての活用と「ロイヤリティアップ」の両方の目的を達成できたのがじゃがり校でした。

──ファンとのコミュニケーションで生まれたエピソードはありますか?

篠谷:ファンの方々からは、商品に対するアイデアもたくさんいただきました。これはじゃがり校以前の話になりますが、 例えば「じゃがりこ」にお湯を入れるという食べ方は、最初はファンの方から教えていただいたものです。今では当たり前になっていますが、当時は斬新なアイデアでした。このように、ファンの声に耳を傾けることで、新しい発見や価値提供につながっています

インタビュー中の風景

SNS時代のファンコミュニケーション

──SNS全盛のいま、ファンとのコミュニケーションはどのように変化したのでしょうか?

谷澤:とにかく「じゃがりこ」は「楽しい」「おもろい」商品であり続けたいと考えています。私たち自身も商品づくりやプロモーションを企画する際に、その事を常に心がけていますが、実はその「楽しい」や「おもろい」は、必ずしも私たちカルビーがつくったものでなくても良いと考えています。ファンの方と一緒に「楽しい」をつくったり、ファンの方が考えた「おもろい」を世の中に広めることも、私たちの役割だと考えているんです。

例えば実際に、SNSでとあるファンの方が「じゃがりこ」について投稿してくれた事を公式アカウントで拡散するといった事も行っています。

ちなみに、「じゃがりこ」の開発者を含め、歴代の担当者には関西出身者が多く、関西らしいノリの良さ、おもしろさを大事にしているため現在のじゃがりこチーム内では「おもろい」という言葉を使っています。

篠谷:実は私も関西出身です。笑

谷澤:ファンの方と一緒に「楽しい」や「おもろい」をつくる活動は、先ほどのじゃがり校時代から続いていたファンとの商品開発が原点であり、直近ではデザインコンテストや、リズムチャレンジ等の企画で、ファンの方と一緒に、「じゃがりこ」のコンテンツやグッズ(=「楽しい」「おもろい」)をつくる取り組みとして続いています

新型コロナウイルスの流行によって、私たちの多くのことがオンラインへとシフトしました。それらは非常に便利である一方で、人と人とのコミュニケーションについては、希薄化しているとも言われています。

その頃から、何か「じゃがりこ」が人と人とのコミュニケーションのきっかけになるような事ができないか、という事を考え始めました。

例えば「じゃがりこ」を、メッセージツールやカジュアルギフトとして使ってもらう。「じゃがりこ」がコミュニケーションツールになることで、会話が生まれたり、人同士の交流が深まれば、そこに「楽しい」「おもろい」が生まれると考えたんです。

そこで、「じゃがりこ」を人にあげる行為を「あげりこ」と称し、「あげりこ」を気軽に楽しくやっていただくためにパッケージにメッセージを書きやすく余白をつくったり、「じゃがりこ」ロゴを「ありがとう」に変えてしまうなど、人にあげやすいきっかけづくりに注力しています

ロゴ変した「じゃがりこ サラダ」
ロゴ変した「じゃがりこ サラダ」

その最新の企画が、2025年3月上旬より期間限定で発売する絵文字パッケージです。絵文字はもっともポピュラーに使われている、気軽に気持ちを表現できるツールだと思います。パッケージにさまざまな絵文字が載っていることで、誰かに気持ちを伝えやすく、コミュニケーションが生まれるきっかけになればうれしいです。

絵文字パッケージの「じゃがりこ」
絵文字パッケージの「じゃがりこ」


「じゃがりこ」ブランドの未来

──今後の「じゃがりこ」ブランドのビジョンを教えてください。

谷澤:「じゃがりこ」は今年で30周年を迎えます。これからも安心して食べられる、おいしいスナックであることを大前提として守りながら、より一層「楽しい」「おもろい」ブランドとして突き抜けていきたいなと考えています。

そしてそれはやはり、カルビーだけでつくるものではありません。ソフトウェア開発におけるオープンソースのように、さまざまな方々が「じゃがりこ」に“参画”し、次々と新たな「楽しい」「おもろい」が付け足されていく…。おぼろげに、そんなイメージを持っています。

 最近では、Calbee Future Laboが中心となって、IP事業の拡大に取り組んでいます。「じゃがりこ」のブランド資産を活かして、アパレルや雑貨など、さまざまなグッズを展開しているのですが、そこにも多様なクリエイターの方々が“参画”してくれることで、自分たちでは生み出し得ない、アイデアが誕生しています。「イケてるアイテム作ったやつ優勝!じゃがりこドリーム2nd」はまさにその典型でしょう。

一般募集から選出した「イケてるアイテム」を2025年4月頃に公式グッズとして販売開始予定です。


こうした多くの人の「参画」を通じて、いろんな場面に(スナックに限らず)「じゃがりこ」が波及し、生活シーンに溶け込んでいくいくような世界を思い描いています。

──今後の「じゃがりこ」のコミュニケーション戦略において、グローバルも視野に入れていますか?

谷澤:「じゃがりこ」はグローバルブランドになることを目指していますが、その取り組みの一つは海外から日本に来たお客様に「じゃがりこ」を知ってもらい、食べてもらうためのコミュニケーションです。昨年より日本国内で販売する「じゃがりこ」商品に英語表記を入れる取り組みを始めました。

また「絵文字」はまさに、日本発の文化として世界中で使われているものであり、絵文字を活用したパッケージの企画は、海外のお客様に「じゃがりこ」を知っていただくのに役立つと思います。国際的なイベントもあり来日外国人が増える2025年は「じゃがりこ」を世界にアピールする絶好の機会になるはずです。

「じゃがりこ」はこれからもファンとのコミュニケーションを大切にしながら、新しい挑戦を続けていきます。今後の「じゃがりこ」にもご期待いただければと思います。


文:間瀬 理恵
写真:櫛引 亮


最後まで読んでいただき、ありがとうございます!次の記事もお楽しみに