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祝 ブランドとして20歳になる「1才からのかっぱえびせん」の誕生秘話

“やめられない、とまらない♪”でおなじみの「かっぱえびせん」には、季節限定のフレーバーや、お酒に合う「絶品かっぱえびせん」シリーズ、桜えびや甘えび、白えびなど素材にこだわった「えび撰」シリーズがあります。いろんな種類がある「かっぱえびせん」ですが、カルビー初の幼児向けスナックとして「1才からのかっぱえびせん」という商品があることをご存じでしょうか?
2023年10月で発売20周年を迎える「1才からのかっぱえびせん」がどのように誕生したのか。企画した宮倉裕幸さんに開発秘話や商品への想いをお聞きしました。

宮倉裕幸さんプロフィール画像

宮倉 裕幸(みやくら ひろゆき)
カルビー株式会社
マーケティング本部 ブランド戦略室 室長
1992年4月入社。営業・マーケティングスタッフとして消費者調査・商品企画を経て、お客様相談室室長を歴任。他社でマーケティングを経験し2022年5月に再入社。EC担当を経て、2023年から現職。


家にある材料だけでできた商品

1975年に発売した「ポテトチップス」や1995年発売「じゃがりこ」がとても好調で勢いに乗っている2000年初頭。当時の経営者から、これまでのスナックのイメージを変えるような安全・安心なベビーフードを研究するようにとマーケティング部門に指示がありました。「かっぱえびせん」の商品企画担当をしていた宮倉さんが調査を進めるとあることに気づきました。

「ベビーフードは月齢ごとに細かくあるけれども1歳までしかなく、1歳過ぎから幼稚園に入る3歳頃までのお子様に与えられる商品があまり存在しないことが分かりました。そして、カルビーでは当時、お子様を持つお母さん自身が幼少期に親から与えられた商品は、『かっぱえびせん』しかありませんでした。すなわち、自分が親から与えられた原体験がある唯一の商品ブランドだったのです」

そこで、1歳~3歳くらいのお子様に食べていただける商品を作ろうと決めた宮倉さんが開発担当者にお願いしたことは2つだけでした。

「1つは、家にある原材料だけで作ること。親御さんが身近な素材だけを使った商品の方が安心してお子様に与えられるからです。もう1つは食感。あの『かっぱえびせん』のサクサクとした食感をさらにくちどけを良くすることを、家庭にある小麦粉や砂糖、食塩などで実現できるようにお願いしました。開発担当者はとても大変だったと思います」

話をしている宮倉さん

自慢げに食べる様子を見て「行ける!」と確信

実際に1歳のお子様を持つ親子に集まっていただき、お菓子を与えている様子を観察しました。すると、たくさんの発見がありました。

「初期の構想では、『かっぱえびせん』の表面にかける油や塩は薄めにして使おうと考えていました。ところが、お子様は食べながらいろいろなところをペタペタ触るんですよね。あちこち汚してしまうのでお母さんたちが気を遣っていました。その様子を見て、油なしでいこうと決めました」

行動を観察していくと、形状にも気づきがあったそうです。

「お子様が手に取りやすいスティックタイプを想定していたのですが、お母さんにインタビューをしている間にお子様が、顔をつつこうとしたり、折れたり、食べ飽きてべとべとになったりしたんです。そこで、親が目を離しても安心して食べられるひと口サイズが良いと気づきました」

通常の「かっぱえびせん」と「1才からのかっぱえびせん」
通常の「かっぱえびせん」(左)と「1才からのかっぱえびせん」(右)

こういった気づきは、お菓子をあげている様子の観察から得ることができました。「当時、私自身が1歳の娘を持つ親でしたので、家で試作品を食べさせて観察していました」という宮倉さん。

「大人が食べているものを欲しがる子供に、妻が油や塩を拭ってフライドポテトをあげている様子を目にしていました。幼児にはやや塩分が多いということです。お客様相談室にも『かっぱえびせん』表面の塩を拭って子供にあげている、とのお声がありなんとかできないかと思いました。やはり1歳から安心して食べられる商品を作る必要があると再認識したのです」

宮倉さんの商品開発では、限られた原材料で食感を軽くするための試行錯誤を重ね、今の形状に至りました。通常の「かっぱえびせん」より塩分を少なくし、一方でえびの風味をよく感じられるよう、えびの量を増やしています。えびをより細かくすりおろすことで口どけが良くなり、カルシウム量も増やすことに成功したのです。

難しいオーダーに真摯に取り組んでくれた開発と、量産化に向けいろいろ工夫をしてくれた工場の方々に恵まれたからこそ実現した商品でした

試作品を作っては、自分の子供に食べさせ反応を見ていた宮倉さん。「パッケージもお子様が持ちやすいサイズの袋にしたかった」といいます。親と同じように、お子様は「1才からのかっぱえびせん」を一袋持って自分で食べられる。一人でできる満足感を持てるし、親としても一人前に食べられるようになったことに喜びを感じます。こだわりのサイズにした試作品ができて早速子供に食べさせたところ、自慢げに一袋をペロッと食べている様子を見て「これは行ける!」と確信したといいます

笑っている宮倉さん

今の商品のデザインは公募から

商品名は「エンジェルかっぱえびせん」にしようと考えていたところ、消費者調査で「全否定」されたそうです。他にもたくさん案を出しましたが、「1才から」が分かりやすくていいと高評価に。「かっぱえびせん」というブランドが分かりやすいことと、1歳から何をあげたらいいか分からないから困るというニーズに合致して、珍しいくらい明確に結果が出ました。パッケージデザインについても様々な議論が交わされたといいます。

「『かっぱえびせん』ブランドであることが分かるのは大前提です。当時“親子”がキーワードでコミュニケーションをしていました。ロゴの墨文字は幼児向けにそぐわないと思い、発売当初はえびのイラストのみにしました。イラストだけでも『かっぱえびせん』ブランドと分かっていただけるだろうと思ったんです」

かっぱえびせんロゴ
かっぱえびせんロゴ 右上にあるのが墨文字

「初代はタオルのやわらかさを背景にしたデザインです。二代目は、デザイン公募をして一般の方が考えてくださったパッチワークを採用しました。ステッチ柄は可愛らしさを表現していて、現在も使用されています」

担当者が替わり、今では「かっぱえびせん」ブランド共通のロゴを使用しています。

左から初代、2011年、2013年、2014年、2023年の「1才からのかっぱえびせん」
左から初代、2011年、2013年、2014年、2023年の「1才からのかっぱえびせん」

想い出の中にある一袋。寄り添う存在に

幼児向け商品として誕生した「1才からのかっぱえびせん」は油分や塩分を気にする大人の方にもご好評いただいています。そんな状況についても聞いてみました。

「大人が食べることも、想定していました。2003年頃、女子高生がベビーオイルを使うというのは流行っていたんです。赤ちゃんが使えるものならナチュラルで身体に良いはず、という理屈です。1歳から食べられるものは大人にも身体に良いと捉えられると思いました。『大人向けに名前を変えて欲しい』や『大きいサイズを作ってほしい』というお声をいただいたりもしましたが、“1才から”という分かりやすいコンセプトを現在も大切にしています」

いまでは国内に留まらず、中国でも発売をしています。海外へ羽ばたいていることはどう思っているのでしょう。

幼少期の大切な時間に『1才からのかっぱえびせん』が寄り添う存在であれたら、こんなに嬉しいことはありません。海外に展開されるのは非常にありがたいですね」

左:日本の「1才からのかっぱえびせん」と右:中国の「小さいおこさまえびせん」
日本の「1才からのかっぱえびせん」(左)と中国の「小さいおこさまえびせん」(右)

夢は100年ブランド

誕生から20周年を迎えるブランドに成長したことに対して、今の想いをお聞きしました。

「先代の方々が大切に築き上げてきた『かっぱえびせん』のサブブランドの立ち上げに関わり、20年経った今でもご支持をいただいていることはとても感慨深いです。商品企画のステキなことは、お客様にも目に触れるものとして形にできることです。商品がこれからも愛されて100年ブランドになったら嬉しいです


「以前、お客様からいただいたお手紙を見せてもらったことがあります。少し発育の遅いお子様をもたれたお母さんからのお手紙で、周りの子供は自分で食べるのに、自分の子供はなかなかひとりで食べてくれないことを心配していたが、『1才からのかっぱえびせん』を初めて一人で食べてくれてとてもうれしかったという内容でした。お客様に喜んでいただけて嬉しいですし、寄り添えているなと感じます。自分一人の力じゃないけれど頑張れたなと思えます。辛い時にはいつもその手紙のことを思い出します(笑)」と宮倉さん。

20周年を迎える「1才からのかっぱえびせん」はほとんどリニューアルすることなく、今も愛されています。今では、親子だけでなく三世代で楽しんでいただいている商品は、これからも想い出の中に存在し続けると思います。きっと100年後も愛されるのではないでしょうか。

文:町田 有希
写真:瀧澤 彩、櫛引 亮

幼児向け商品として誕生して早20年が経ち、ブランドとしてはロングセラーといえるほどに成長しました。 現場力のおかげで誕生した商品と宮倉さんは話しますが、徹底した調査と分析、そして強力な助っ人の存在が欠かせなかったのだと思います。そんな助っ人をしてくれたお子様ももうすぐ社会人になられるそうです!

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