2037年の未来人につなぐ、カルビー創業の地、広島でつくる次世代型スマート工場
約18年ぶりの新工場建設がカルビー創業の地、広島で始まります。
第1期竣工は2024年、完全竣工は2037年予定と10年以上におよぶ新工場づくり。
カルビーの生産部門の歴史における大きな転換点となる、新しい、少し先の未来の工場づくりをまとめる「次世代生産プロジェクト」リーダーの大野さんにお話を伺いました。
工場のスマート化、生産現場とDXという課題
大野さん:カルビーグループの工場は国内で協力工場あわせて16工場が稼働しています。その中でも、広島県には「ポテトチップス」などを製造する広島西工場と「かっぱえびせん」などを製造する広島工場の2つの工場があります。
広島西工場は1986年の操業開始から37年が経ち、経年メンテナンス、商品需要の拡大と労働力不足に対応する設備の自動化など、生産効率の向上が急務です。
工場を建設するには、広くて安全な土地が必要なことに加え、原材料の運搬や排水処理などの条件があるため、なかなか具体化が進まず、これまでの工場でなんとか工夫して製造していました。
そんな折、広島県が進めていたお話もあって、近隣に位置する広島市佐伯区に新工場建設の運びとなりました。
社内では2022年4月に「次世代生産プロジェクト」という部署を新設し、プロジェクト型のチームで新工場立ち上げに取り組んでいます。
最新工場を作るには、最新工場を知るところから始まり、コンセプトを決め、工場建設のノウハウに富む大手建設会社との情報交換、各社からの提案と交渉、そして選定。前身の“未来工場設計プロジェクト”発足からここまでで約4年。
建設プランが確定してからも決定事項が膨大で、今回建設を請け負っていただく企業の担当者の方とはほぼ毎日会っていますね。
新工場の現在地
大野さん:現地は敷地の整備が終わり周辺道路の整備中です。4月の建屋の着工に向け、コンセプトに沿った具現化を進めてきました。
例えばこの敷地内にどのように建屋を配置するかだけでも大いに検討しました。西側をエントランスにし、来客動線、従業員動線、物流動線がスムーズに動くようにしました。
また製品づくりではますます市場ニーズへの柔軟な対応が求められていますので、多品種生産が可能なように、そして今後の開発余地を残すため、工期を第1期~3期に分けました。
第1期着工後は約1年をかけ建屋の建設。その後屋内の工事に着手し2024年末に稼働予定です。
大野さん:当初はいわゆる“工場見学ルート”のようなものを製造ラインに沿ってレイアウトしようと考えていました。しかし、今回のテーマであるスマートファクトリーを実現しようとすると自動化のための大きなスペースが必要となります。まずはスマートファクトリーの実現がお客様への還元にもなると考え、近隣の広島工場には現在工場見学ルートがあることから第1期計画では見送りとしました。
環境と資源とエネルギー
大野さん:これからの工場は環境へのさらなる配慮が求められます。再生可能エネルギーの活用、原料を無駄なくエネルギー資源に転換する設備、水資源の循環システムなどを導入する予定です。
ポテトチップスを揚げた際の廃熱をエネルギーに再利用するシステムも取り入れます。
“人と地球の笑顔をつくりだす、未来を形にする工場”をコンセプトに
大野さん:工場の製造現場はまだまだ人が介在する仕事が多く、実際の業務負担軽減、そしてこれからの労働人口減少による人手不足を考えるとスマート化は必要不可欠なテーマです。
新工場のコンセプトを「人と地球の笑顔をつくりだす、未来を形にする工場」と決め、他の工場とも連携しDXの取り組みを開始し改善を重ねています。
今回でいうと“人が探さない、重くない、運ばない構内物流”であったり、どうしても人の目、人の手が必要な箇所はなるべく快適な環境にしたいですし…製造ラインのフライヤーのところはとても暑いんですよ。
また出勤すると退勤までは工場内で過ごすことがほとんどなので従業員の皆さんが少しでもリラックスできる食堂や休憩スペース、そして工場ではまだ実現しきれていない“リモートワーク”にもチャレンジできる環境にしていきたい。エネルギーや資源のスマート化も外せません。
この新工場が次のカルビーの標準になると思うとやりたいことが山ほどあります。
今回の新工場プロジェクトが完了する頃には、自分も次世代にバトンタッチしていますが、まずは2024年末の稼働に向けプロジェクトチーム一丸となって取り組んでいます。いいものを未来のカルビー人に引き継ぎたいですね。
文・写真/伊藤奈美子