見出し画像

2037年の未来人につなぐ、カルビー創業の地、広島でつくる次世代型スマート工場

約18年ぶりの新工場建設がカルビー創業の地、広島で始まります。
第1期竣工は2024年、完全竣工は2037年予定と10年以上におよぶ新工場づくり。
カルビーの生産部門の歴史における大きな転換点となる、新しい、少し先の未来の工場づくりをまとめる「次世代生産プロジェクト」リーダーの大野さんにお話を伺いました。

大野 憲一 (おおの けんいち)
カルビー株式会社 執行役員 次世代生産プロジェクト リーダー(*)
1990年カルビー入社。生産本部技術部部長、技術本部本部長を経て現職。これまで数々の製造ライン、R&Dセンター建設などを担当。

(*)2023年1月取材

工場のスマート化、生産現場とDXという課題

大野さん:カルビーグループの工場は国内で協力工場あわせて16工場が稼働しています。その中でも、広島県には「ポテトチップス」などを製造する広島西工場と「かっぱえびせん」などを製造する広島工場の2つの工場があります。
広島西工場は1986年の操業開始から37年が経ち、経年メンテナンス、商品需要の拡大と労働力不足に対応する設備の自動化など、生産効率の向上が急務です。

広島西工場の正面入口。写真左上のカタカナの「カルビー」ロゴの看板に歴史を感じます。

工場を建設するには、広くて安全な土地が必要なことに加え、原材料の運搬や排水処理などの条件があるため、なかなか具体化が進まず、これまでの工場でなんとか工夫して製造していました。
そんな折、広島県が進めていたお話もあって、近隣に位置する広島市佐伯区に新工場建設の運びとなりました。

広島県が企業誘致のために造成した新しい埋立地。写真左側の西方向にカルビー広島工場、その先に広島西工場がある。

社内では2022年4月に「次世代生産プロジェクト」という部署を新設し、プロジェクト型のチームで新工場立ち上げに取り組んでいます。
 
最新工場を作るには、最新工場を知るところから始まり、コンセプトを決め、工場建設のノウハウに富む大手建設会社との情報交換、各社からの提案と交渉、そして選定。前身の“未来工場設計プロジェクト”発足からここまでで約4年。
建設プランが確定してからも決定事項が膨大で、今回建設を請け負っていただく企業の担当者の方とはほぼ毎日会っていますね。

大野さんは学生時代は農学を専攻。入社後は機械の開発がしたいと考えていたそうです。機械や工場を作る部署というと一般的にはその存在を知られていないかもしれませんが、新しいオリジナルの商品を作ろうとすれば、その機械や製造ラインも世の中にあるわけではないので、自ずと作らなくてはなりません。 このnote「THE CALBEE」にも登場している山﨑さんと一緒に「じゃがりこ」の製造機械にも携わられたそうです。
「じゃがりこ」開発者が語る始まりの物語

建設予定地にて4月の起工式に向け現場確認。


新工場の現在地

西側、エントランスから見た新工場模型。
屋根部分を開けると物流機械の模型も配置されています。

大野さん:現地は敷地の整備が終わり周辺道路の整備中です。4月の建屋の着工に向け、コンセプトに沿った具現化を進めてきました。
例えばこの敷地内にどのように建屋を配置するかだけでも大いに検討しました。西側をエントランスにし、来客動線、従業員動線、物流動線がスムーズに動くようにしました。
 
また製品づくりではますます市場ニーズへの柔軟な対応が求められていますので、多品種生産が可能なように、そして今後の開発余地を残すため、工期を第1期~3期に分けました。
第1期着工後は約1年をかけ建屋の建設。その後屋内の工事に着手し2024年末に稼働予定です。

図の上が西側、図の左が南側・瀬戸内海。用途別に入口を分け回遊できる道路でスムーズな動線にしている。敷地の約半分を残すことでメンテナンスや増築にもフレキシブルに対応できる。
広島西工場構内に設置された建物の外観図と外壁の色見本。
外壁色は従業員投票で決定するそうです。事務棟は4階建て、製造棟は縦の空間を広げ2階建て。
従業員投票の様子。どの色に決まるでしょうか。(2023年1月取材時)

大野さん:当初はいわゆる“工場見学ルート”のようなものを製造ラインに沿ってレイアウトしようと考えていました。しかし、今回のテーマであるスマートファクトリーを実現しようとすると自動化のための大きなスペースが必要となります。まずはスマートファクトリーの実現がお客様への還元にもなると考え、近隣の広島工場には現在工場見学ルートがあることから第1期計画では見送りとしました。

新工場の工場見学、楽しみにしていてください!
第1期に移転する広島西工場の従業員の皆さん。「新しい工場への移転、楽しみ」だそうです。


環境と資源とエネルギー

埋立地とはいえ、青空のもと輝くのは瀬戸内海に浮かぶ無人島からの土。
地域のためにも環境負荷の少ない工場を目指します。

大野さん:これからの工場は環境へのさらなる配慮が求められます。再生可能エネルギーの活用、原料を無駄なくエネルギー資源に転換する設備、水資源の循環システムなどを導入する予定です。
ポテトチップスを揚げた際の廃熱をエネルギーに再利用するシステムも取り入れます。

馬鈴薯の皮や残渣、製品になる途中のロス、馬鈴薯に含まれる水分など、工場に入ってきた馬鈴薯は全て無駄なく資源に転換される。


“人と地球の笑顔をつくりだす、未来を形にする工場”をコンセプトに

大野さん:工場の製造現場はまだまだ人が介在する仕事が多く、実際の業務負担軽減、そしてこれからの労働人口減少による人手不足を考えるとスマート化は必要不可欠なテーマです。
新工場のコンセプトを「人と地球の笑顔をつくりだす、未来を形にする工場」と決め、他の工場とも連携しDXの取り組みを開始し改善を重ねています。
 今回でいうと“人が探さない、重くない、運ばない構内物流”であったり、どうしても人の目、人の手が必要な箇所はなるべく快適な環境にしたいですし…製造ラインのフライヤーのところはとても暑いんですよ。

写真はカルビー湖南工場での取組み事例。ポテトチップス加工状況を数値化してモニターで確認。各工場でスマートファクトリー化に向けた取り組みが始まっている。
新工場1階のオフィス部分と4階休憩スペースの完成イメージ。
開放的かつ落ち着けるスペースになりそうです。

また出勤すると退勤までは工場内で過ごすことがほとんどなので従業員の皆さんが少しでもリラックスできる食堂や休憩スペース、そして工場ではまだ実現しきれていない“リモートワーク”にもチャレンジできる環境にしていきたい。エネルギーや資源のスマート化も外せません。
この新工場が次のカルビーの標準になると思うとやりたいことが山ほどあります。

新工場の建屋の完成イメージ。西側エントランスから見たところ。

今回の新工場プロジェクトが完了する頃には、自分も次世代にバトンタッチしていますが、まずは2024年末の稼働に向けプロジェクトチーム一丸となって取り組んでいます。いいものを未来のカルビー人に引き継ぎたいですね。


文・写真/伊藤奈美子


最後まで読んでいただき、ありがとうございます!次の記事もお楽しみに