【対談】フルーツグラノーラを食べると幸せホルモンが上昇!?研究でわかった「朝食と幸せ」の関係
今日、3月20日が何の日かご存じでしょうか。
国際連合が定めた「国際幸福デー」で、幸せを願い、考える日となっています。
カルビーでも「食と幸せ」について、これまで考え続けてきました。
たとえば昨年9月には、朝食と幸せホルモンの関係を調べる研究を実施。その結果、朝食にフルーツグラノーラを摂取すると、幸せホルモンのひとつである「オキシトシン」の分泌が上昇することを確認したのです。
この取り組みは、幸せホルモン研究の第一人者で桜美林大学の山口創教授と、カルビーの共同研究によるもの。
そこで今回は、山口教授と、カルビーのフルーツグラノーラの企画に関わる網干弓子さんが対談。そもそも幸せホルモンって何?という素朴な疑問から、今回の研究結果の感想、さらにカルビーがフルーツグラノーラに込めた“食の幸せを感じる工夫”まで、幅広く話し合いました。
近年重要性が増している?人とのつながりで分泌される「オキシトシン」
―共同研究のお話を聞く前に、そもそも「幸せホルモン」ってどんなものなのでしょうか。
山口:幸せホルモンと呼ばれるものはいくつかありますが、代表的なのは「セロトニン」と「オキシトシン」です。「セロトニン」は、簡単に言えば心と体を安定させるホルモン。ストレスがかかって戦闘モードになっているとき、それを元の状態に戻す作用があるんですね。
「オキシトシン」は、おもに他者と関わるときに分泌されるホルモン。たとえば赤ちゃんを抱っこしたり、恋人同士で抱き合ったり、ほのぼのした幸せとの関連が深いんですね。ペットとの触れ合いでも分泌されます。
この2つのほか、「ドーパミン」も幸せホルモンと言われることが多いです。「セロトニン」と「オキシトシン」は心と体の安定に関わるホルモンでしたが、「ドーパミン」は自己実現や自分のやりたいことを追求するときに出てくるホルモンで、方向性が違います。
網干:「ドーパミン」は昔からよく聞く機会があったのですが、「セロトニン」と「オキシトシン」は最近聞くようになった印象ですよね。
山口:ここ数年、働き方が見直される中で、私生活や家族、友人との時間がより重視されています。そこで、「セロトニン」や「オキシトシン」のような、心の穏やかさにつながるホルモンが注目された面もあると思います。
特に「オキシトシン」は重要になっていますね。コロナ禍で人との交流が減るなど、日常で「オキシトシン」の幸福感を得にくくなっていますから。
網干:コロナ禍でペットを飼う方が増えたというニュースも耳にしましたが、関係があるかもしれませんね。ちなみに、人やペットと関わる以外に、「オキシトシン」が分泌される瞬間はあるのでしょうか。
山口:ひとつは五感を楽しませることです。五感への刺激で「オキシトシン」が分泌することが分かっているんですね。なかでも“味覚”については、甘さを感じると「オキシトシン」が出やすいんです。
網干:甘さが強ければ強いほど、「オキシトシン」の分泌も増えるのですか?
山口:いえ、甘いほど良いということでもなく、あくまで適度な甘さが重要です。食べていて心地よい甘さというか。ちなみに、「オキシトシン」が体内で分泌されると、食欲を抑える作用もあるんです。
ですから、ストレスがたまると甘いものをたくさん食べたくなる人もいると思いますが、ちょうど良い甘さのものを選んで「オキシトシン」が出れば、食べ過ぎの抑制につながる可能性もあるんですね。
網干:これはタメになる情報かもしれません(笑)。
山口:「オキシトシン」を頻繁に分泌した方が、心にとっても体にとっても良いはずです。肌へのプラス作用※1も期待できますし、最近はアンチエイジングの領域でも注目されています。ストレスホルモンの分泌を防いで、人の寿命を決める組織に良い影響を与えるのでは、という研究※2もあるんです。
フルーツグラノーラで幸せホルモンが分泌した2つの理由とは
網干:カルビーでも、食と幸せに関する研究を長く行ってきました。食事によって体の健やかさを考える機会は多いのですが、それだけでなく、心の健やかさを考えることも大切だからです。2014年に朝食事業を始めてからは、シリアルと幸福度の関係も調べていたんです。
その中で、シリアルを摂取している人・していない人の幸福度を調査したイギリスの論文※3があって。読んでみると、シリアルを摂取する人の方が、幸福度が高いという結果が出ていました。これを見て、もう少し深く研究してみたいと。特にフルーツグラノーラと幸福度の関係を調べられないかと考えたんです。
山口:それはどうしてですか?
網干:フルーツグラノーラを食べると、おいしさだけではない、食べる楽しさも感じられると思っていて。もしその理由を科学的な面から分析できたら意義深いな、と。ちょうどその頃、山口先生が幸せホルモンについて研究されているのを知って、今回の共同研究をご相談させていただきました。
山口:お話を聞いたときは、素直に面白そうだと思いましたね。先ほど言ったように、味覚や食と「オキシトシン」には関わりがあると分かっていたので、どういう結果が出るのか興味深いなと。それで今回の研究が行われた形です。
山口:結果を見ると、フルーツグラノーラを食べた人は、明確に「オキシトシン」の分泌量が高まることがわかりました。ほかの主食と比べても、もっとも多く分泌されることがわかりました。
なお、フルーツグラノーラを食べた後の「オキシトシン」分泌量は、ペットと触れ合ったときの上昇率と近いもの。それだけの分泌が起きるのは興味深い発見でしたね。
網干:もうひとつ、今回の結果でポイントだったのは、朝食自体も「オキシトシン」とつながっているのがわかったことです。というのも、メニューにかかわらず朝食を摂取したときと摂取しなかったときの「オキシトシン」の変化を比べたところ、朝食を摂取した方が「オキシトシン」分泌量はキープされていました。
山口:「オキシトシン」は夜寝る前から就寝中に高い状態になり、その後、起床して活動するとだんだん下がっていく傾向にあります。今回の結果を考えると、日中の「オキシトシン」の低下に備えて、朝食を少しでも食べておくという考えもできますよね。
網干:朝食を食べない方は近年増えていますし、特に若い単身男性の方は少ないというデータもあります。こういった視点でも、朝食の大切さを感じていただけたらいいですね。
―なぜ、フルーツグラノーラでオキシトシンの分泌が促進されたんでしょうか。
山口:フルーツグラノーラの持つ「適度な甘み」と「香り」が作用したのだと思います。適度な甘みが「オキシトシン」の分泌につながることは先ほど話した通り。フルーツグラノーラは、グラノーラを焼き上げて、さらにフルーツを加えています。これが適度な甘みになって、「オキシトシン」の分泌につながったのではないのでしょうか。
「香り」も「オキシトシン」との関係が強いと考えられていて、ほかの研究でも「香り」が「オキシトシン」の分泌を促すこともわかっているんですね。フルーツグラノーラは焼き上げたことで香ばしい「香り」が生まれます。おそらくそれが寄与したのではないかと。
網干:「オキシトシン」に重要なのは“五感を楽しませること”と先生はおっしゃっていましたが、その意味でフルーツグラノーラは相性が良いのかもしれませんね。
山口:ですから、食べるときはなるべく五感に意識を向けて、より味わって食べると「オキシトシン」も分泌されやすくなると思います。しっかりと五感を刺激することが大切ですから。
カルビーがフルーツグラノーラのザクザク食感に込めたこだわり
網干:私たちにとっても、今回の結果はとても参考になりました。そもそもフルーツグラノーラも、おいしさだけではない、五感で楽しめるものにしようと考えていて、たとえば使用するフルーツも、あえていろんな彩りのものを入れて、見た目を楽しんでいただこうとしています。
山口:そう言われてみると、適度にさまざまな色があってカラフルですよね。
網干:食感についても、噛んだときのザクザク感を大切にしていて、つくり方もそのために工夫しています。
たとえばフルーツグラノーラをつくるとき、一度シート状に固めたグラノーラを焼き上げて、その後に砕くんですね。最初から一粒ずつバラバラで焼いているわけではありません。なぜなら、焼いてから砕くことで大小まばらな粒ができるからです。
山口:それがザクザク感を生むということですか?
網干:さまざまなサイズのグラノーラを一緒に噛むことで、口の中にいろんな食感が生まれます。それがあのザクザク感になり、噛んでいるときの楽しさにつながると思うんです。
山口:実は、私たち家族もカルビーのフルーツグラノーラを食べているのですが、やっぱりその食感が好きなんです。子どもがすごく楽しそうに食べています。噛んで楽しむというフルーツグラノーラの魅力はいいかもしれませんね。
網干:朝食を食べる方が増えるだけでなく、楽しく食べる方が増えて欲しいですね。日本人の朝はとにかく忙しいですから。フルーツグラノーラによって、よりよい朝の時間づくりに貢献したいですし、今回のように食のいろいろな効果や情報も伝えていけたらと思います。
山口:心と体を安定させたり、人との関わりで幸せを感じたりということがコロナ禍で重要になりましたし、今後もそれは意識しなければならないと思っています。食は生活と密接に関わっていますから、引き続き、食と幸せホルモンの関係を考えていきたいですね。
文:有井太郎(外部)
編集・写真:櫛引亮