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「じゃがりこ」をNFTやスニーカーに!?カルビーがIP事業を拡大する理由

皆さんは「じゃがりこ」がスニーカーや合体変形ロボットのおもちゃに“変身”していることをご存知でしょうか。

カルビーの各ブランドにはさまざまなキャラクターや象徴的なデザインがあり、これらのIP(知的財産・Intellectual Property)を活用してグッズや雑貨、ゲームアイテムなどを手掛けている組織があります。それが「Calbee Future Labo(カルビー フューチャー ラボ、略してCFL)」です。

CFLが本格的に“IP事業”をスタートさせたのは、2023年10月のこと。これまでもカルビーのIPを使ったグッズはありましたが、この事業は新しいチャレンジ。もともとのキャラクターやデザインを活かしながら、より大胆にアレンジしてグッズや雑貨をつくるのが特徴で、今まで以上に「二次創作性が強い」ことがポイントです。

では、IP事業に力を入れる目的はどこにあるのか。実際にどのようなものを作っているのか。CFLを率いる松本知之さんに聞きました。

松本 知之(まつもと ともゆき)
カルビー株式会社 
Calbee Future Labo ディレクター
1994年入社。営業、経営企画、ポテトチップスのブランドマネジャー、全社マーケティング戦略の立案などの業務に従事。2019年より4年間、マーケティング本部長を務め、2023年4月より現職。


「じゃがりこ」スニーカーの反響がIP事業注力のきっかけ

2023年4月、カルビーに入社して30年のキャリアを積んできた松本さんはCFLを率いることになりました。

もともとCFLは、新商品開発に特化したユニークな組織として、カルビーの創業地である広島で活動を行ってきました。

この中でいろいろな新商品が誕生したことから、広島での活動は一区切りとし、2023年から、改めて新規事業の開発を行う現在のCFLがスタート。東京に拠点を移し、松本さんがリーダーになります。「これからどのような事業を手がけていくのか、ゼロから考えていくことになりました」と振り返ります。

そこからなぜ、IP事業に力を入れることになったのでしょうか。背景にはいくつかのきっかけがあったといいます。
 
ひとつは、お客さま視点の企業活動がこれまで以上に必要だと感じたことでした。
 
「今の時代は、多様な価値観があるため、私たちがお客さまのニーズを予測するのには限界があります。だからこそ、実際のお客さまに近づいて、一緒に考えながら企業活動を進めたいと思っていました。まずは、お客さまの生活とカルビーブランドの接点を増やしたいと考えたんです。その一環で、IPをもとにしたアイテムをつくる発想が生まれてきました」

仮にIP事業を行うとしたら、カルビーは「ちょっと得かもしれない」と感じていたことも後押しになりました。広く知られているブランドが多数あり、それぞれのブランドに対して、一人ひとりがストーリーや思い出を持っていると確信していたからです。
 
「たとえば、カルビー社員の名刺には商品画像が載っているのですが、名刺を交換した方が、その商品の思い出をお話いただくことが多いんです。それもみなさん楽しそうに話してくれます。こうしたブランドを多く持つ企業は少ないと思いますし、愛着があるからこそ、ブランドのアイテムを買ってみようかなという考えにつながるはずです」

カルビー社員の名刺は14種類の商品のシズル(中身)写真が掲載されている
カルビーのIP資産の例

さらに、2023年3月に立ち上げた雑貨ブランド「じゃがりこ と」から発売されたスニーカーが人気を集めたことも、IP事業を推し進めるきっかけになりました。
 
「このプロジェクトは、CFLに所属しているデザイナーが『雑貨屋さんをやりたい』と言い出して始まったものです。スニーカーをクラウドファンディングで発売すると、すぐに支援目標をクリアし、お客さまの反応もとても良かったんです。私も買って愛用していますが、純粋にかわいいと思いました。この事例を通して、カルビーを生活シーンの中に溶け込ませるよう“仕立てていく”ことに意味があると感じたんです」

「じゃがりこ」をさりげなくデザインしたスニーカー
取材当日、松本さんは「チーズ(赤)」カラーのスニーカーを履いていました

これらのきっかけから、IP事業に注力することになりました。お菓子を食べる以外のさまざまなシーンでカルビーを思い出してもらえれば、ブランドの愛着を高めることにもつながります。「それは、30年間お世話になったカルビーブランドに対する、私なりの恩返しにもなると思いました」

大切なのは“カルビーらしくチャーミング”かどうか

これまでも、カルビーのIPを使ったアイテムはありましたが、CFLの活動は今までと異なる新しい点があります。それは、もとのブランドデザインを基本にしつつ、アレンジをより大胆に行うこと。いわば二次創作性が強いといえます。まさに松本さんが先ほど言った、生活シーンに溶け込ませるよう仕立てていく点が特徴です。

では具体的に、どのようなものを作っているのでしょうか。その一例が、Amazonや SUZURIといったECサイトのカルビー公式ショップで売られているグッズ類です。

ここでは、各ブランドのキャラクターやデザインを使ったTシャツ、トートバッグ、スマホケースなどが並んでいます。商品パッケージそのままではなく、一部の要素を使ったデザインや、キャラクターがさまざまなスタイルで描かれたものなど、二次創作性の高いアイテムがたくさんあります。

ECサイトのカルビー公式ショップで売られているグッズの例

とりわけ「じゃがりこ」のグッズは豊富です。おなじみのキャラクターであるキリンをモチーフにしたアイテムのほか、「じゃがりこ」のスティックを色々なパターンで描いたものや、「じゃがりこ」のロゴフォントで「ぱぱ」「まま」「こども」と記されたTシャツもあります。母の日や父の日に向けて作ったもので、「季節のイベントに『じゃがりこ』を仕立てた例」とのこと。

「じゃがりこ」のロゴフォントを使ったTシャツ

「『じゃがりこ』は、デザインとして魅力のあるコンテンツがたくさん詰まった商品なんですよね。カップの形やロゴ、キャラクターを使って、いろんな展開をしています」

仕立てる上で大切にしているのは“Be Friendly, Be Charming.”なデザイン。松本さんがマーケティング本部時代にメンバーと定義した、カルビーブランドの「らしさ」です。そこから外れず、親しみやすくチャーミングなものをつくるのが基本。お客さまに“かわいい”と思っていただけるものをつくろうと考えていますね」

「かっぱえびせん」のNFT!?想像超える他社との“仕立て”

他企業とのコラボレーションでつくられたアイテムも増えています。トートバッグ専門ブランドのROOTOTE(ルートート)と共同開発したバッグや、バンダイの合体変形ロボ「ユニトロボーン」と「じゃがりこ」のコラボレーションアイテムは、その代表例です。

カルビー×ROOTOTEスナックトート
ユニトロボ じゃがりこクレーン

コラボレーションはweb領域にも広がっています。2024年9月には、3つの人気web3ゲームで使えるアイテム(NFT・非代替性トークン)を発売。「じゃがりこ」や「かっぱえびせん」が各ゲームの世界観に融合し、ファンの反響も大きかったといいます。

WEB3ゲームとのコラボレーション企画のイメージ

さらに同月、スマートフォンで簡単に3Dアバターを作成して遊べるアプリ「ZEPETO」上で、ユーザーのアバターに着用可能な「じゃがりこ」のファッションアイテムを展開しました。おなじみのカラーのドレスやアクセサリーを、アバターが身にまとうものです。

「じゃがりこ」のファッションアイテムを身にまとったアバター

「必ずしもカルビーだけが仕立て役になる必要はありません。それぞれのジャンルの“プロ”である企業の方が仕立てたらどうなるのか。まさにその界隈ならではの価値観で考えていただけるので、私たちの想像を超えるアイデアが出てきます
 
アバターのファッションアイテムは分かりやすい例。「『じゃがりこ』のドレスをアバターが着るという発想は、社内メンバーではなかなか思いつきません」と松本さん。こういったコラボレーションを「これからも増やしたい」と言います。

目指すのはカルビーグッズをお客さまと一緒につくれる世界

仕立て役は、企業だけでもありません。
松本さんは「いずれは一般のお客さまが自由にカルビーのIPを使った創作ができるようにしたいですね」と語ります。
 
お客さまがカルビーのIPを使った二次創作物を作り、それを公式グッズとして展開することで、「お客さまが企業活動に参加する世界」を目指しています。
 
その世界観を先駆けて実現しているのが『「じゃがりこ細いやつ」グッズデザインコンテスト』です。このコンテストでは、参加者が「じゃがりこ細いやつ」のイラスト素材をもとにグッズを提案し、選ばれた作品は公式グッズとして商品化されます。

「じゃがりこ細いやつ」グッズデザインコンテストのキービジュアル

「これは『じゃがりこ』のブランドチームが実施している企画で、CFLもデザインワークやグッズ制作を担っています。選ばれた作品については、収益の一部をクリエイターの方に還元するなど、まさに私たちが目指すお客さま参加型モデルを先行で実践しているものですね」

また、CFLでは「カルビー ルビープログラム」のアプリ運用や管理を行っており、その中でも、新商品の開発調査にお客さまが参加するプロジェクトが立ち上がっています。毎回多くの方が参加を表明しており、IP事業だけでなく、こちらからも「お客さまの企業活動への参加」を実現していき、お客さまとカルビーがシームレスにつながる世界の実現を目指しています。

「カルビーブランドに恩返しがしたい」「雑貨屋を開きたい」。様々な思いから始まったCFLの新しい挑戦。合体変形ロボットのおもちゃやアバターのドレスに続いて、次はどんなアイテムが登場するのでしょうか。ワクワクする“仕立て”の誕生を、ぜひご期待ください。

文:有井太郎(外部)
写真・編集:櫛引亮

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▼カルビーのNFT施策の体験レポート

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