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発売から半世紀以上!ロングセラー商品「かっぱえびせん」開発の歴史を紐解く

編集部では、さまざまな商品の開発秘話を担当者に聞いていきます。
第1回は“やめられない、とまらない”でおなじみの「かっぱえびせん」です。

1964年に誕生し、今年で57年目。たいへん長い間、お客さまに愛されている商品ですが、実は、誕生当時からそのレシピはほとんど変わっていません。
そんなカルビーの代名詞とも言える商品は、どのようにして生まれたのか?「かっぱ」とはなぜ付いたのか?商品開発当時のことについて、現在「かっぱえびせん」の事業を担当する鵜飼直樹さんにお話を伺いました。

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鵜飼 直樹(うかい なおき)
カルビー株式会社 マーケティング本部 商品4部 部長
1995年入社。営業・管理会計・原料調達・「ポテトチップス」の商品企画などを歴任し、2019年より現職。「かっぱえびせん」および野菜スナック事業を統括している。

原点は“腹持ちのいいものを食べさせたい”という思い

―「かっぱえびせん」の原型として「かっぱあられ」という商品があったと聞きました。まず、この商品が生まれた背景や理由を教えてください。

鵜飼:1950年頃、日本はまだ食糧不足の時代で、人々がお腹いっぱい食べるというのは夢のようなことでした。だからこそ“人々においしくて栄養豊富で腹持ちのいいものを食べさせたい”。カルビーの創業者であり、「かっぱえびせん」の生みの親である松尾孝さんはそんな思いから新しいお菓子を模索していました。

腹持ちのいい食べものといえば米ですが、当時、米は配給制で入手しにくく値段も高かったのです。なんとか安価でたくさん食べられるお菓子をつくれないかと考え、思案の末にたどり着いたのが小麦を原料にすることでした。
当時、小麦はアメリカで余剰の農産物だったため、日本への大規模な輸入が開始されていました。また、小麦粉の成分を調べてみると、米とほとんど同じだったといいます。そこに目をつけた孝さんは知人や友人を訪ね歩き、必要な情報やさまざまな協力を得て、小麦粉であられを製造する技術を苦労 の末に確立したといいます。

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「かっぱ天国」清水崑さんとの出会い

―その小麦製のあられの商品名に、「かっぱ」が付いたのはどのようないきさつからなのでしょうか。

鵜飼:孝さんは、厳しい経営を強いられながらも、小麦製あられの未来に明るいものを感じていました。その当時、週刊誌で連載されていた明るい漫画「かっぱ天国」の大ファンになり、キャラクターや「かっぱ」という語感の良さに魅かれていたようです。

かっぱ天国01表紙

漫画「かっぱ天国」

そこで製品化する小麦製あられには、子供たちに親しんでもらえるよう、パッケージに「かっぱ」のキャラクターを付けたいと考えました。親類縁者のツテをたどって、「かっぱ天国」の作者である清水崑さんと面会できる機会を持ったと聞いています。

清水崑先生【写真】

 清水崑さん

清水さんと孝さんは東京の品川駅の近くで会いました。清水さんは長崎の出身、孝さんは広島出身。ふたりとも原爆投下の被害を受けた都市の出身者ということで意気投合しました。その結果、描き起こしの「かっぱ」のキャラクターと直筆の「かっぱ」の文字の使用、「かっぱ」の商品ネーミングへの使用許可を得ることができました。

会社の苦境を吹き飛ばした「かっぱ」シリーズ

―なるほど。それが商品名の“かっぱ“につながったのですね。

鵜飼:そうなんです。1955年、ついに日本初の小麦製あられである「かっぱあられ」が発売されます。甘辛い味の「かっぱあられ」は、よく売れました。その同じ年に会社の社名を「松尾糧食工業株式会社」から、「カルビー製菓株式会社」に変更しています。会社にとってもまさに苦境を吹き飛ばす起死回生のヒット商品となりました。

1955年_かっぱあられ編集

1955年に発売した「かっぱあられ」

カルビーはこの「かっぱあられ」を皮切りに次々と「かっぱ」シリーズの商品を発売しました。

横綱あられ、一番槍、味大将

さまざまな「かっぱ」シリーズ

実は、発売当時から「かっぱえびせん」の「かっぱ」のロゴは清水さんの直筆で、その後の「かっぱえびせん」に脈々と引き継がれ、現在の「かっぱえびせん」のパッケージデザインにも使用されています。

かっぱえびせんロゴ

最後の「かっぱ」シリーズとして誕生した「かっぱえびせん」

―「かっぱあられ」は発売当時、まだ甘辛い商品だったのですね。その後、どのようにして「かっぱえびせん」に進化していったのでしょうか。

鵜飼:この当時の菓子の新商品といえばチョコレートが圧倒的に多く、また良く売れていました。ちょうどカカオ豆の輸入が自由化されたことから、菓子メーカーはこぞってチョコレート商品を製造して発売していました。
「スナック菓子」という言葉すらまだ日本に定着していなかった頃に、塩味でカリカリとしていて、あとを引いて食べ続けたくなるお菓子を世に問うたのが「かっぱえびせん」です。

孝さんは、「かっぱあられ」の売り上げが好調であっても、さらに進化させる研究を止めることはありませんでした。「どうすればもっと美味しくなるのか。あとを引く美味しさの条件とはどのようなものなのか」と常に考え続けていました。

ある日、孝さんは広島の瀬戸内海でとれた小えびを海辺で干しているところに偶然通りかかりました。その時にハッと“菓子に利用できないか”とひらめいたと言います。

その発想の背景には、川えび獲りの名人と言われた幼少期の思い出があったそうです。家に持ち帰った川えびで母親が作ってくれた、かき揚げの味。“あのおいしかった川えびのかき揚げのような菓子”を作ればきっと喜んでもらえる。親交があった広島県知事からも「真の広島特産に値する名物が欲しい」との依頼もあり、「瀬戸内のえび」を使った商品開発に早速着手することとなりました。

当時の瀬戸内の小えびは産地で消費される程度で、広く市場に出回っていませんでした。その小えびを原料にするということは、未利用資源の活用でもありました。とはいうものの、えびの風味をおいしく活かす製法にたどり着くには相当苦労したようです。茹でてみたり粉末にしてみたり、いろいろ試しましたが、どれもいまひとつ納得できる味にできなかったとのことです。

そして試行錯誤の末にたどり着いたのが、鮮度の良い生のえびの頭から尾までを丸ごと殻ごとミンチ状にして、小麦粉の生地に混ぜて蒸気で蒸しながら練るという現在の製法でした。こうして1964年、「かっぱえびせん」は、「かっぱ」シリーズ最後となる27番目の商品として誕生したのです。

かっぱえびせん(ヌキ)

1964年に誕生した「かっぱえびせん」

半世紀以上も続く「かっぱえびせん」の作り方

―生のえびを丸ごとミンチ状にすることで、えびの風味を生地に封じ込められるんですね。

鵜飼:原料のえびを粉末にしてしまっては、せっかくのえびの風味が活かせない。数種類の生えびを丸ごとすり身にする製法だからこそ、「かっぱえびせん」独特の風味が生み出されます。調味料の調合では出せない風味ですね。

蒸練工程を経て、いったんやわらかな餅のような状態になった生地は薄く延ばされ、運んだり保存したりしやすくするためにローラーに巻かれます。この時同時に筋を入れます。この筋がこのあとの乾燥工程では、乾きやすくさせる効果もあります。その後、乾燥してやや堅くなった生地を「かっぱえびせん」の形にカットした上で、今度は機械の中で熱をかけてしっかりと乾燥させます。

生地の時の微妙な水分の違いで、食感は大きく変わるため、生地の太さや原料の配合などにも、大変な苦労があったと聞いています。

最適な水分量に乾燥させたあとは、いよいよ焙煎です。生地は塩と一緒に煎ることで適度に膨らみ、サクサクした食感になります 。この心地よい食感が「かっぱえびせん」の持ち味であり、ヒットした理由でもあります。味付けは、孝さんが幼少のころ大好きだったえびのかき揚げと同様、えびの風味を最も活かすシンプルな"塩味"です。乾燥させる前の生地の段階で入れた筋は、カットして煎ったあとの「かっぱえびせん」1本に、約10本入っていますが、この筋のおかげで塩味が絡みやすくなります。焙煎のあとは、食べる際にのど越しが良くなるように食用油を吹き付けて、完成です。

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1片に、約10本の筋が入っている「かっぱえびせん」

幅広い世代に愛される100年ブランドを目指して

―改善改良を続けるにあたって、こだわっていることや目指している目標などを教えてください。

鵜飼:「かっぱえびせん」は発売当時の味をベースにしながらも、時代に合わせて常に微調整しています。もっとおいしくを標榜し、えびの産地や漁獲時期にもこだわっています。たとえば、えびは複数をブレンドしていますが、「かっぱえびせん」に適した品種を、それぞれの産地でもっともおいしい時期に漁獲して急速冷凍しています。年間を通して、解凍すれば刺身でも食べられる鮮度のまま原料として使用しているわけです。

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ロングセラー品は、ともするとブランドとしての目新しさがなくなってしまいますが、「かっぱえびせん」の目標は、パッケージデザインも含め、常に現役感あるブランドであり続けることです。そして更なる歩みを止めず、幅広い世代に愛される100年ブランドを目指しています。



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