人工衛星からじゃがいも畑を見る、カルビーポテト先端技術チーム
2020年にカルビーポテト株式会社馬鈴薯研究所内に農業での先端技術活用をミッションにした先端技術チームが発足しました。人工衛星データを活用した圃場(畑)管理をはじめ、DX導入を進めています。そのチームでカルビーグループ全体のプロジェクトも推進する荒木宏通さんにお話を聞きました。
―人工衛星から、じゃがいも畑を見る
人工衛星というと皆さんとても興味を持ってくださるのですが、これは2018年から本格稼働した「圃場管理システム」で管理される位置データの活用事例のひとつです。
技術的なお話をすると、リモートセンシングといって人工衛星から人間が見える可視光以外の特殊な波長を利用して、圃場(畑)や植物の健康状態を観察します。
特殊な波長といっても、土の中にできるじゃがいもまでは観察できないので、萌芽(ほうが)から成長し黄変(おうへん)するまでの茎や葉のデータを取得しています。
その他にも「圃場管理システム」では、過去の栽培データや土壌情報、前年の作物データ、その年の栽培・生育データなど多元的に情報管理しています。
―先端技術チームの仕事
私たちはITやAIなどの先端技術で効率化や省人化しながら、契約圃場の収穫量や品質の向上はもちろん、気候変動にも順応した栽培管理の確立や年ごと畑ごとのばらつきを最小にすることを目指しています。
技術・知識など情報支援を進めて、難しいともされる馬鈴薯栽培のハードルを下げて効率的な生産と維持、流通に貢献したいと考えています。
これまでもカルビーポテトでは全筆(*)調査といって契約生産者さんの全圃場情報を調査させていただいたりと、その時代にできる方法で栽培技術の向上を目指してきました。(*)筆=土地の単位
さらにここ数年は新しい技術が農業へも波及し、DX推進とも相まって大きな変革が求められています。
カルビーポテトもフィールドマンの経験・記憶、そして紙ベースの農地管理から「圃場管理システム」に移行したことで様々な情報のデジタル管理ができるようになりました。
―農業工学との出会い
子どもの頃から農業に興味があって、学生時代は道内の大学で作物の生育過程を数値モデル化する研究をしていました。
研究対象は北海道4大作物の小麦、豆、ビート、馬鈴薯からの選択だったのですが、他の作物はすでに担当者がいたので…そんな流れでたまたま馬鈴薯担当になったんです。
―目指すはワンオペ?
ワンオペ、と聞くとネガティブな印象がありますが、農業ではポジティブな言葉です(笑)。高齢化と少子化の影響は農業においても大きな問題ですので、ワンオペで可能な農業経営の効率化、省力化はさらに重要になると思います。
―気象データの活用
2022年からは気象データの活用も進めています。
ここ数年は特に天候の影響を実感してますし、じゃがいもはそうした気象による収穫量・品質への影響が大きいです。
気象データの取得と活用で契約生産者さんにも気象による影響を軽減できるような栽培方法の提案ができればと思います。
―これからの農業と先端技術チーム
これまで肥料設計を省力化できる「施肥プログラム」、土壌や栽培の記録「圃場カルテ」と続々と運用開始しています。その他にもアプリで馬鈴薯栽培を支援する「カルビーポテトアプリ」を構想して今後リリース予定です。
また馬鈴薯の調達に直結する畑の領域だけでなく、仕入・輸送・検査・貯蔵工程へと活動範囲を広げています。さらに契約生産者さん向けの技術動画・ホームページ制作など、先端技術チームが関わることは数え切れません。
カルビーポテトの強みはフィールドマンが契約生産者さんと二人三脚でのじゃがいも栽培の中で培った信頼関係、そして何度も畑への足を運び調査・観察・収集してくれた栽培データがあることです。
じゃがいもエキスパート集団の一員として自分たちチームも貢献したいと思っています。
将来的にはじゃがいも栽培だけでなく、農業全体にも貢献できたら、と思います。
*本文中それぞれお話の内容によって、じゃがいも/馬鈴薯、圃場/畑を併用し記載いたしました。
文・写真:伊藤奈美子