カルビーロゴはなぜ赤いのか?~社員も意外と知らない真相に迫る。
企業ロゴは、その企業を誰にでも直感的に想起させる大切なシンボルです。ひと目見ただけで「これはあの企業のものだ」とパッと思い浮かぶロゴが、皆さんの身の回りにもあると思います。
ロゴは、色や形、フォントなど、さまざまな要素から構成されていて、それぞれに意味を持っています。
では、どうしてカルビーロゴは赤いのでしょうか。カルビー社員に聞き込みを行ってみたところ、実にさまざまな説が浮上しました。
<カルビー社員から出てきた説>
・赤は情熱的・活発な印象を与える説
・「かっぱえびせん」の赤パッケージがベースになっている説
・食品企業として、食欲のわく暖色系を採用した説
・太陽の赤からきている説
・創業の地「広島」に本拠地を置く球団のチームカラー説 など
どの説もいわれてみると「そうかも?」と思わせるものばかりですが、社員の皆さんもどこか自信なさげで確証は得られず・・・これは「THE CALBEE」の威信にかけて真相を突き止めなければ!と勝手な使命感に駆られて、今回、筆をとる運びとなりました。カルビーロゴにまつわる過去の資料を引っぱりだし、ロゴ制作に関わっていた社員に数十年前のことを思い出していただきながら取材を行いました。
カルビーロゴの変遷を振り返る
真相に辿り着けることを祈りつつ、まずはカルビーロゴの変遷を振り返ってみようと思います。
カルビーの前身となる松尾糧食工業株式会社が1949年に設立され、1955年にカルビー製菓株式会社へ社名変更しましたが、この時はまだ、企業ロゴは存在しなかったようです。1964年に発売された「かっぱえびせん」のパッケージを見ても、それらしきものは見当たりません。
公式記録として残されている、カルビーロゴが初めてつくられたのは1967年のことです。こちらがそのロゴになります。
この年、「かっぱえびせん」のアメリカ輸出をきっかけに、太陽をモチーフとしたカルビーロゴがつくられました。海外進出を意識して、英字のCalbee表記になっています。フォントデザインも1960年代のビンテージな雰囲気が漂っていますね。
続いて、1975年に発売された「ポテトチップス」から、楕円型のロゴが登場。主に商品パッケージなどで使われるようになりました。カタカナ表記で少し丸みを帯びており、親しみを感じさせるデザインになっています。
さらに、世界最高峰のモータースポーツであるF1へのイベント協賛がきっかけとなり、1991年からは大文字アルファベットタイプのロゴが新たに加わりました。
詳細は後ほど触れますが、これまで紹介した3つのロゴはしばらくの期間、併用されることになります。こうした変遷を経て、1994年に現在のロゴが誕生し、すべてがこのロゴに統一されました。
ここで、現ロゴに込められた想いをご紹介します。
2006年には、コーポレートメッセージ「掘りだそう、自然の力。」が策定され、メッセージ付きのロゴも制作されました。
こうして振り返ってみると、カルビーロゴは一貫して、赤を使用しています。
カルビーロゴはなぜ赤いのか? ―それは、1967年につくられた太陽をモチーフにしたロゴで使用した赤を、現在もコーポレートカラーとして受け継いでいる、というのが真相であることが明らかになりました。
現在のカルビーロゴが制作された舞台裏
さて、1994年に現在のデザインへ生まれ変わったカルビーロゴですが、そこにはどんなストーリーがあったのでしょうか。当時、広報部に所属し、カルビーロゴのリザインプロジェクトに関わっていた野稲 宏史さんにお話しを伺いました。
<プロフィール>
野稲 宏史(のいね ひろふみ)
カルビー株式会社
カルビーカスタマーマーケティングカンパニー 西日本営業本部 近畿支店 お客様相談室 室長
趣味は長距離ウォーキングとオールドロック
「当時は、太陽マーク・楕円型・大文字アルファベットタイプの3つのロゴが、商品パッケージや工場、オフィス、協賛イベント、営業車、名刺などでバラバラに使われていました。1991年12月号の社内報に、『こんなにありますカルビーロゴ』という特集が組まれていたほどです。お客様とのコミュニケーションを考えると、それらを統一すべきとの声が社内であがったのがきっかけで、カルビーロゴのリザインプロジェクトが立ち上がりました」
「この頃のカルビーは、年間約13億袋(現在は約20億袋)の商品を製造・販売していました。パッケージだけでも、それだけの数のお客様とのコミュニケーションが可能だったことになります。そこで新しいロゴによって、お客様とのあらゆる接点で統一されたコミュニケーションを目指そう、となったのです。ただ、これまでのロゴは、多くの社員が慣れ親しんだものであったので、培ってきたイメージをベースにして、さらに発展させたデザインにすることを意識しました」
プロジェクトが立ち上がったのが1993年。新しいロゴが決定するまでには多くの過程を踏んだのだといいます。
「さまざまなデザイン案の中から、社員やお客様からアンケートをとり、外部有識者の意見も参考にしながら、候補を絞っていきました。最終的に、グラフィックデザイナーの松永 真さんにご提案いただいたロゴに決まりました」
新しいロゴのお披露目に向けた舞台裏のエピソードについても語ってくれました。
「実は、プロジェクトと並行して、赤羽(東京都北区)に新本社ビルの建設計画が進んでいました。JR京浜東北線の電車から見える立地だったこともあり、一番目立つところに新しいロゴを設置することになったのです。ビルの竣工が7月で、役員会でロゴが最終決定されたのが5月23日でした。急ピッチで準備を進めたのを覚えています」
新たなロゴをお披露目して、社内外の反応はどうだったのでしょうか。
「ロゴを決める過程で、社員やお客様の声を多く聞いていたこともあり、おおむねポジティブな反応をいただきました。ただ、商品パッケージにロゴを入れる際、『かっぱえびせん』のような純和風の商品に英字ロゴを入れることに対して、一部の商品担当者は戸惑いを感じていたようです。最終的にはトップの大号令のもと、全商品のパッケージに反映されました」
たしかに「かっぱえびせん」の歴代パッケージを見てみると、お披露目から約5年が経った1999年のパッケージには楕円型ロゴがまだ残されていて、下に小さく現在のロゴが掲載されています。ロゴを統一するまでの道のりは、決して容易ではなかったことが想像できます。
現カルビーロゴがお披露目されてから、2022年7月で丸28年を迎えました。これからもこのロゴが、世界中のお客様とのコミュニケーションに寄り添う存在でありたいと願っています。
文:古澤 大輔
写真:間瀬 理恵