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チーズは手作業で振りかけていた!?生みの親が語る「ピザポテト」誕生までの道のり

カルビーを代表する商品のひとつ「ピザポテト」。濃厚なチーズとスパイスが効いたピザソース、ザクザクした食感が特長の厚切りポテトチップスで、1992年の発売以来、たくさんのお客様に支持されています。

“本格的なピザの味を再現する”という考え方は変わっていませんが、中身やパッケージは時代に合わせて進化を続けてきました。そして、この度、4年ぶりにリニューアルし、14代目「ピザポテト」に生まれ変わります。

編集部では、この節目に合わせて「ピザポテト」の開発者でカルビー研究開発本部長の遠藤英三郎さんに話を聞きました。

今ではたくさんのお客さまに親しまれている「ピザポテト」が生まれたきっかけは何だったのか。世の中に出るまでにどのような苦労があったのか。ロングセラー商品の開発秘話をお届けします。

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遠藤 英三郎(えんどう えいさぶろう)
カルビー株式会社 執行役員 研究開発本部長
1984年入社。4年間の工場勤務後、「ピザポテト」のほか「堅あげポテト」や「ア・ラ・ポテト」「ポテトチップス 九州しょうゆ」など多くのロングセラー商品を開発。2020年4月より現職。

お好み焼きと宅配ピザがきっかけで登場した「ピザポテト」の前身

「ピザポテト」誕生の話は、いまから30年前にさかのぼります。1990年に一部コンビニエンスストア限定で登場したポテトチップス「イタリアンピザ」がその前身。陽気な赤色のパッケージデザインが印象的なこの商品の開発背景には、なんと「お好み焼き」の存在がありました。

1990年イタリアンピザ

「ピザポテト」のルーツとなった「イタリアンピザ」

「『イタリアンピザ』に着手する少し前、私が開発の部署に異動してきたばかりのころに『お好み焼きチップス』という商品を開発したところ、大きなヒット商品になりました。そこで、次に何を開発しようかと考えたところ、お好み焼きと形も似ているピザにもチャンスがあるのではないかと考えたのです」

お好み焼きチップス

1980年代にヒットした「お好み焼きチップス」

当時のポテトチップスの味は塩・のり・コンソメが主流。「お好み焼き味」は変わり種として受け入れられたものの、ポテトチップスの市場自体は決して右肩上がりではありませんでした。どうすればポテトチップスの需要を拡大できるか開発側としては常に課題意識があったといいます。

もうひとつ大きな理由として、宅配ピザの流行が挙げられます。当時はちょうどピザの宅配が普及し始めていた時期で、世間的にも注目度が上がっていました。「いま思えば、世間の流行も無意識のうちに頭にインプットされていたのかもしれません」と遠藤さんは振り返ります。

1日8時間の手作業!チーズをつける闘い

そして始まった「イタリアンピザ」の開発は、苦労の連続でした。遠藤さんたちは事前にお客さまにアンケートを行い、粉がけのみでピザ味を出す製法と、チーズフレークを加えた製法のどちらが好まれるかを調査しました。評価としては五分五分だったのですが、ピザ好きな人はチーズフレークを掛けた方を好んでいることがわかりました。
この方々は将来コアなお客さまになってもらえるのでは――という期待もあり、チーズフレークを活用する製法で「イタリアンピザ」の開発をスタート。しかし、これは後のロングセラー商品「ピザポテト」へとつながる第一歩だったのと同時に、遠藤さんら開発陣にとっては苦難の道のりの始まりとなります。

「最初はとても簡単に考えていて、ポテトチップスの生産ラインの過程でチーズフレークをパラパラとかければ、自然にチーズがポテトチップスにくっつくだろうと想定していました。それで特に問題は出ないはずだと。しかしテスト販売のための生産が始まると、初日からトラブルが続出して『これ、作れないぞ・・・』となったんです」

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開発陣が見舞われたのは、チーズに関するいくつものトラブル。ポテトチップスからこぼれたチーズがコンベアについて製品の流れが止まったり、それに伴ってチーズのロスが大量に出てしまったり。簡単だろうという予想に反して、チーズはポテトチップスにまともにくっつきませんでした。遠藤さんたちは、手を変え品を変え、工夫を凝らしながら「イタリアンピザ」の試作に挑みました。

開発に当たり特にこだわった点として、遠藤さんは「チーズの溶け方・ポテトチップスへの付着のさせ方」を挙げます。チーズが熱で完全に溶け切ってしまうと、味がついていても、食べる人の目に見えません。

「チーズフレークがポテトチップスについていることが、ぱっと見てわかることにこだわっていました。見た目で楽しさを伝えたかったんです」

こうした思いを実現するため、遠藤さんは生産ラインのなかでちょうどいい温度のポイントを探っていきました。チーズがコンベアにくっつかず、同時に最もポテトチップスに付着しやすいポイントはどこなのか。

ようやく適切なポイントを見つけたものの、スペース等の関係上、チーズをかける機械を導入するのが難しい場所でした。そこで、機械ではなく、人の手でチーズをかける方法を選びます。遠藤さんは「キッチン用のスコップを持って、コンベアで流れてくるポテトチップスにチーズをかける作業を、1日7~8時間くらい延々とやっていました」と当時の苦労を思い返します。

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「当時製造していた茨城県の下妻工場には電車で毎日通勤していたのですが、工場で1日ピザの粉まみれになっていたので、ピザのスパイシーな匂いやチーズの匂いが体に染みついていて、帰りの電車が少し恥ずかしかったのを覚えています(笑)」

これが現在の「ピザポテト」で採用している、揚げたて熱々のポテトチップスにチーズフレークをのせて溶かしつけるカルビー独自の「メルトフレーク製法」につながる最初の一歩でした。「イタリアンピザ」の開発当初、人が手でチーズをかけていた製法は、後に導入された専用設備によって受け継がれ、現在まで「ピザポテト」の生産を支えています。

効率よくチーズをつける秘策!厚切りギザギザカット

試行錯誤の末に発売した「イタリアンピザ」は大きな反響を得たため、1991年に「ピザチップス」としてリニューアル。パッケージを一新し、「メルトフレーク製法」を押し出して大々的に売り出しました。

1991年ピザチップス

「ピザチップス」

「ピザチップス」は全国的なヒット商品となりましたが、まだまだ生産上の問題もありました。「イタリアンピザ」から「ピザチップス」への移行で、チーズ味フレークの手がけからは脱却し専用設備を導入したものの、依然としてチーズがロスしてしまう問題やポテトチップスに付着するチーズ量が少ないという課題が残っていました。

「さらに効率よくポテトチップスに付着させるにはどうすればよいか…」と考えていた時に生まれたアイデアが、ポテトチップスの表面をギザギザにすること。こうすることで、チーズがポテトチップスによく付着するようになりました。ここで初めて、現在流通している「ピザポテト」の形ができあがります。

「表面をギザギザにしたことはチーズを付着させるための都合もありましたが、これにより通常のポテトチップスよりも食べ応えが生まれます。この商品はお腹をすかした若者世代にガッツリ食べていただきたかったため、結果的にお客さまのニーズを満たすことにつながったかもしれません」

ポテトチップスの表面を厚切りギザギザカットに改良し、1992年にはお馴染みの黒いパッケージの「ピザポテト」として全国発売をスタート。その後は約2年ごとにリニューアルを繰り返しながら、全国で多くのファンを獲得していきます。カルビーならではのロングセラーとして定着した現状を、遠藤さんは「開発者としては嬉しい限り」と受け止めます。

1992年ピザポテト

1992年に発売した「ピザポテト」

「開発担当である限り、誰しも『世の中に残せるようなヒット商品を作りたい』と思っているはずです。これだけたくさんのお菓子があるなかで、長く支持される商品を世に出せたことは幸せなことです。ただ、私がたまたま考案しましたが、工場でベタつくチーズと悪戦苦闘していただいた方や、機械の開発に携わっていただいた方、シーズニングメーカーさんやチーズを供給していただいているメーカーさんあってのことですし、ずっと愛していただいているお客様に感謝したいです」

「ピザポテト」の人気を実感した思い出として、遠藤さんが忘れられない出来事があります。2017年のいわゆる「ポテチショック」です。

2016年にポテトチップスの原料であるジャガイモの一大産地・北海道が大型台風の被害に見舞われ、収穫量が大きく落ち込みました。このためカルビーでも、原料不足のため商品の一部で生産をストップせざるをえなくなり、「ピザポテト」が品薄になった時期がありました。その時、お客さまから「『ピザポテト』を食べたい」、「『ピザポテト』が無くなって本当に残念だ」と「ピザポテト」を惜しむ声が次々と寄せられたといいます。

「お届けできなかったのは残念でしたが、いただいたお声は本当に嬉しかったです。安定して供給できるようになってから、『ピザポテト』を支持してくれる方が増えた気がします。あの出来事は忘れられません」

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お客さまの気持ちに寄り添う「いい友達」であってほしい

「ピザポテト」はその前身の商品も含め、リニューアルを繰り返しながら30年間にわたって多くの方に親しまれてきました。開発者である遠藤さんに現在の「ピザポテト」が、どのように見えているのかを問うと、「私の時代よりも美味しくなっていて、チーズ味フレークのバラつきも少なくなっていると思います」と語ってくれました。

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歴代の「ピザポテト」

「『ピザポテト』は、結果的にバラつきの多い商品になっています。少し格好つけた表現をするなら、『バラつきの美学』といいますか。そこを許容していただいたお客さまに感謝しなければいけないと思っています。『ピザポテト』を支持し続けていただいていることが非常にありがたいです」

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カルビーの工場で生産されるポテトチップスは、均一なものを目指して機械でスライスされますが、完成品は大きさにも形にも厚みにも、ある程度のバラつきが生まれます。これは食感の多様性にもつながり、食べていても飽きません。まして「ピザポテト」は、チーズの付着具合の違いもあるため、はっきりとバラつきが出ます。

「もちろん、均一にする努力を続けていますが、どうしてもある程度のバラつきが出てしまいます。もしかしたらこのバラつきがお客さまに長く支持いただいている秘密なのかもしれません。絶えず不完全な部分が残っていることが『ピザポテト』らしいところで、食べる側にとって飽きの来ないおいしさにつながっている可能性もあります」

このたび2021年6月に14代目としてリニューアルする「ピザポテト」。生みの親としてこれからの「ピザポテト」に何を期待するのかと尋ねると、遠藤さんは「『これからも愛され続けてほしい』ということと、『しっかりお客さまの役に立つ商品になってね』ということです」と笑みを広げます。

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14代目のピザポテト

「お菓子の価値の一つは『楽しさを提供する』ことだと思います。ただ、生きていくうえでは楽しい時ばかりではなくて、悔しい時や悲しい時、ムシャクシャしている時などいろいろあります。『ピザポテト』には、お客さまのその時々のお気持ちに寄り添った商品でいてほしい。お客さまの楽しさを倍増させてくれたり、悲しさを半減させてくれたりできるような、お客さまのいい友達であってほしいですね」

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