カルビーはなぜ本社オフィスをリニューアルしたのか!?プロジェクトリーダーが語る舞台裏
新型コロナウイルスの影響で在宅勤務が広がり、たくさんの仕事がオンラインでできる時代になりました。それに伴いオフィスそのものをなくしたり、引っ越したり、スペースを削減するなど、企業の間でいろいろな動きが出ています。
カルビーも今月、大きな一歩を踏み出しました。
東京・丸の内の本社オフィスを全面リニューアルし、新オフィスで業務を開始したのです。もともと利用していた2フロア(22、23階)を1フロア(22階)に集約し、“畑”をモチーフにしたカルビーらしい空間に一新しました。
リニューアルをけん引したのは、社内の色々な部署からメンバーを募った横断型チーム「明日の働き方プロジェクト」。変化が大きく先行きが不透明な中で、カルビーが中長期的に成長を続けるためにはどうすれば良いのか、今後の働き方やオフィスの在り方を模索し、リニューアルを推進してきました。
ということで、今回はこのプロジェクトリーダーのカルビー難波俊也さんに本社オフィスリニューアルの舞台裏を聞きました。
難波 俊也(なんば としや)
カルビー株式会社 セールス&マーケティングカンパニーCVS事業本部 CVS事業部セールスマネジャー
2007年入社。東京支店の営業・マーケティング、「堅あげポテト」ブランドマネージャーを経て、2018年より現職。2020年6月より「明日の働き方プロジェクト」リーダー
リーダーは営業。“当事者意識”をベースにした部門横断型チーム
「カルビーらしさが随所に散りばめられていて、働くのが楽しみな空間になりました」
取材の冒頭。完成したばかりの新オフィスを見渡し、難波さんは誇らしげに語りました。
「ようやくここまできました。働き方や考え方が違うさまざまな部署の社員と、じっくり侃々諤々(かんかんがくがく)議論を進めてきたおかげです」
カルビーの新本社オフィス
プロジェクト発足は約1年前にさかのぼります。
新型コロナウイルスが全世界で猛威を振るう中、カルビーは2020年7月より、オフィス勤務者のモバイルワークを原則とするなどの新しい働き方「Calbee New Workstyle」を導入しました。並行して、今後の働き方やオフィスの在り方を検討していくために部門横断型の「明日の働き方プロジェクト」が立ち上がったのです。
メンバーは、営業の立場で参加した難波さんのほか、財務・マーケティング・海外・情報システム・広報・人事など、若手・中堅を中心とした社員10名前後。総務部門は事務局としてサポートし、現場社員の意見を重視して進めるプロジェクトです。
「もしかしたら1つの部署でプロジェクトを進めた方が楽かもしれませんが、その部署だけの目線になってしまう。ほかの部署から見れば、“総務がやったこと”“人事がやったこと”となる可能性もあります。そうではなく、カルビーが大事にしている“圧倒的当事者意識”をもって、今後の会社を担う現場の社員がどういう働き方を望んでいるのか、どんなオフィスであれば働きやすいのか、みんなで考えていくのが最適と考えたのです」
さらに、それぞれ専門領域が違う社員が自由に意見を出し合うことで、結果的に自信をもって進めることができ、意思決定の速度が上がったといいます。例えば、営業は見本を使うので見本のサンプル置き場が必要で、マーケティング担当はパッケージをチェックするプリンター用のスペースが欲しい、広報的には撮影するためにこういった背景があったほうが良いーなど、実際に業務に当たる社員だからこその細かい要望を聞くことができました。
新しい働き方を加速させたフラットでオープンな社風
では、プロジェクトのメンバーはどうやって決まったのでしょうか。
難波さんの場合は大きく2つの理由があったといいます。
「1つは声をかけてもらった時に率直に面白そう、やってみたい、と思ったこと。会社員人生でオフィスの変革に関われるチャンスはめったにありませんから。私はなんでもチャンスととらえる性格なので。もう1つは、入社当時から“明日出社するのが楽しい会社をつくりたい”という夢があったことです。社員一人ひとりが働いている会社に愛着を持ち、毎日楽しく働けたら最高ですよね。今回の件はまさに、その実現につながる絶好の機会だと考えました」
長年抱いていた強い思いを胸に、難波さんはプロジェクトリーダーに立候補。プロジェクトメンバーとともに、今後の働き方やオフィスの在り方を探っていきました。
まず行ったのは、社員の現状分析。カルビーでは2014年に在宅勤務制度をスタートし、2017年には勤務場所、回数を制限しないモバイルワーク制度を導入しましたが、これまでは利用する社員が限られていました。プロジェクト発足の2020年6月ごろは、コロナの影響もありオフィス勤務者の多くがすでに数か月間のモバイルワークを実践しており、そのフィードバックを参考にしようと考えたのです。
結果、約6割の回答者がモバイルワークに順応し、その働き方に満足していることが分かりました。そこで、以前と同じ働き方に戻るのは現実的ではないとの結論に至ったといいます。
「実は私自身、すぐにモバイルワークに慣れた人間だったので、納得の結果でした。振り返ってみると、2020年4月~12月までで出社したのは10日もなかったのです。コロナ前は一度もモバイルワークを使ったことがなかったので驚きです。“仕事は出社してやるもの”、“得意先との商談は面と向かってやるもの”というステレオタイプがあったのかもしれませんね。社内には私のような考えの人が多かったと思います」
新しい働き方「Calbee New Workstyle」の導入後、本社オフィスの出社率は2割程度で推移しました。プロジェクトの打ち合わせもリモートが前提。数回ほどオンラインとオフラインを組み合わせて開催したことはあっても、メンバー全員がリアルに集ったことは「1年間で一度もなかった」とのこと。
多くのオフィス勤務者が一気にモバイルワークにシフトできた背景について、制度やシステムのほか「社風やカルチャーがある」と難波さんは分析します。
「自分で考えて自分でやるという企業文化がマッチしたのかもしれません。先ほどの圧倒的当事者意識もそうですが、カルビーでは受け身の姿勢ではなく、自発性を重んじています。例えば、モバイルワークが中心になったことを受けて、私の部署ではチームワーク向上のためにビデオ会議をつなげて雑談をする時間を取っています。また、全社的に新プロジェクトがはじまると公募することが多く、やりたい人を尊重しています。あとは、先輩後輩の壁が高くない、フラットでオープンな社風もあるかもしれないです。実際、社長室もないですし、どんな役職者も『さん』付けで呼んでいます」
自発性を重視する会社だからこそ、今回のリニューアルで重視したことの一つに難波さんは「多くの選択肢を用意すること」をあげます。
「一人ひとり、パフォーマンスが出せる場所や時間は違いますし、家庭環境も違う。ある従業員にとっては毎日オフィスにいくことがベストかもしれないし、別の従業員にとっては毎日オンラインかもしれない。これからは、成果を出すために自ら働く場所や時間を選ぶべきだと思うのです。だからこそ、オフィスにもいろいろなシーンを想定する必要があります」
目指したのは “カルビーの一員”と実感できるワクワク空間
社内で脈々と育まれたカルチャーや、現場の声、アンケート結果をもとに、2020年9月ごろ、プロジェクトは2フロアから1フロアへ本社オフィスをリニューアルすることを経営層に提案、決定しました。同時に、オフィスをつくる上で大切にすることとして、キーワード“共感(エンゲージメント)・協働(リレーション)・共創(コラボレーション)”を設定しました。
「モバイルワークを行う中、一人でやるパソコン作業、一方的な報告はオンライン上でできるということがわかりました。こうした中で、オフィスに求められるのは、人と人が顔や空気感を共有すること、それによって生まれるコミュニケーションだと私たちは定義しました」
モバイルワークで生活が快適になった人がいる一方で、コミュニケーションが取れず、孤独を感じる人もいるかもしれません。そういう社員にも、コミュニケーションやチーム作業を通じてカルビーグループの一員であることを実感してもらいたいという思いを「共」や「協」に込めたといいます。
その後、キーワードをもとに、2021年2月ごろパートナー企業を決定し、新オフィスのハード面の検討を始めました。具体的な使い方としては、パソコンを使った個人業務や報告型会議などはリモート実施を前提とし、新オフィスでは社員間やお客様との関係構築、教育といった場面で使うことを想定。目指したのは“社内だけでなく社外からもあつまりたい空間”です。
「私たちは、食を通じて楽しさやおいしさを届けて、お客様が笑顔になっていただける商品をつくっています。その作り手の私たちは当然笑顔で働くべきです。だから、新しいオフィスでは社員がワクワクして働けるかどうか、そして本社で働く社員だけでなく工場や支店の方々も、社外の人も集まりたくなる場をつくりたかったのです」
議論するプロジェクトメンバーら
“作物が実る畑のように”アイデアが生まれる場へ
今回のリニューアルでは、こうした思いを体現して、カルビーらしさを存分に感じられるように工夫しました。モチーフはカルビーが大切にしている“畑”。コンセプトは「Dig up field~新しいを掘りだそう~」として、“作物が実る畑のように、アイデアが生まれるオフィスにしたい”という思いを込め、ロゴも新たにつくりました。
新オフィスのロゴ
「掘りだそう、自然の力。」をコーポレートメッセージに、長年、契約生産者と二人三脚でじゃがいもづくりに取り組んでいるカルビー。だからこそ、畑をモチーフにすることは自然だったのかもしれません。
畑の畝(うね)をイメージしたエントランス
難波さんに特に印象に残っている場所を聞くと、「選べないです(笑)」と満面の笑みを浮かべた後、丁寧に説明してくれました。
「まず、モチーフの畑や自然を感じる場所がたくさんあるところです。それから、カルビーグループの商品名がつけられた会議室。会議室内の床や内装、オフィス什器まで商品をイメージしたものを選定しました。最後に、コミュニケーションを重視した執務室です。リニューアル前のオフィスは、区画の境目が明確で机も綺麗に並んでいましたが、リニューアル後はあえて、区画が重なり合うように設計して、普通に歩いているだけでも、人の交わりがうまれるようなレイアウトになっています」
じゃがいも畑の空撮をイメージした「グリーンアート」
会議室「フルグラ」。吸音パネルも商品らしいものを選択
商品イメージを施した会議室の扉
新オフィスでの業務は2021年9月6日にスタートし、はや数週間が経ちました。難波さんのもとには「すごく良いオフィスをありがとう」「まるで別の会社に来たようにワクワクする」といったポジティブな感想が社員から届いているといいます。
こういった声を「素直にうれしいです」と受け止めつつ、「これからがスタート。完成して終わりではない」と難波さんは前を見据えます。
「これから使っていく中で、不具合や問題もたくさん出てくると思います。そういう課題を社員一人ひとりが主体的になって皆で解決し、どうやってうまく活用していくかが重要です。生まれ変わったオフィスで、新たな価値やアイデアを共創し、カルビーグループ一丸となってイノベーションを起こしていければ」
プロジェクト発足から1年余りで、生まれ変わった本社オフィス。
カルビーはこの一歩を機に新しい働き方をさらに進化させ、お客様にたくさんのワクワクを届けるための挑戦を続けていきます。
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