新規事業開発者の仕事観【社内報より『カルビトの流儀#04』】
カルビーの社内報は1960年に創刊され、現在に至るまで60年以上にわたり発行されています。「かっぱかっぽ」からスタートし、「かるびー」「CALBEE」などと名前を変え、グループ報となった今は社内の連帯感を一層深め、永遠に幸せの輪がつながっていけばという想いを込めた「Loop」という名前です。その中の1つのコーナー「カルビトの流儀」は、仕事上でのほろ苦い経験を通じて得た気づきを基に個人の仕事観を紹介しています。(ちなみにカルビトとは、カルビーグループで働く人のことです)
この「カルビトの流儀」をnoteで公開していきます。
今回は、品質保証の業務に長年携わり、新規事業本部への異動を自ら選択した女性です。
佐伯 千香(さえき ちか)
カルビー株式会社 新規事業本部 新規事業部
2011年4月にカルビー入社、10月から品質保証本部に配属となり約9年間務め、2020年4月から現職。お気に入りの本は「グレイ・ラビットのおはなし」(アリソン・アトリー作 岩波書店 刊)で、登場する食べ物「ヒナギクのジャム」や「あさつゆのローズ酒」がすごくおいしそう!と幼少期から食べ物に興味を持つきっかけとなった1冊。
―品質保証時代の悶々とした日々
入社後、半年間の工場研修を経て、配属されたのが品質保証本部(以下、品証)でした。品証の仕事は、工場の方と一緒に改善をしたり、仕組み作りをしたりが多く、工場や製品のことをよく知っている必要がありました。新入社員に務まるのか?と周りも自分も思っている節があり、実際に「経験ないのにサポートできるの?」と心配されたり、逆に孫を扱うように優しくされたり、あー、頼りないんだな…と己のふがいなさを感じて悶々とした日々を過ごしました。解決策がなかなか見つからなくて精神的にしんどかったです。
ある時上司に相談してみると「一緒に汗をかいてみなさい」と言われたので、約束の時間よりも早く工場へ行って、工場内をウロついたり、仕事が終わっても工場に残り掃除を手伝ったりしていました。AIB(※1)という監査があるのですが、その監査を翌日に控えたある日、いつものように工場を掃除していると、屋外のコンテナに虫がついているのを見つけました。よく見ると、それは駆除対象となる”チャタテムシ”(※2)でした。なんとかしないと!と思って掃除を続けていたら、たまたま工場長が通りかかったのです。「まだおったの?」と聞かれたので「チャタテムシが…」と伝えると、工場長が事務所へ私を連れて行って「この子まだ掃除しとったよ」と事務所にいた方々に伝えてくれました。この後から工場の人たちの私に対する雰囲気が変わり仲間に入れてもらえたような気がしました。自分の中でも「もっとできることがあるかも!」と思えて、気が楽になりましたね。
実は、チャタテムシのことは研修では教わっていないのですが、品質保証本部に配属された時に覚えられることから覚えようと思い、防虫業者さんからいただいた「現場の虫図鑑」を読んで知識を得ていたのです。品質保証に関する知識もライブラリー(パソコンで閲覧)を読み漁って得ました。現場になじめず悩んだ日々もありましたが、今では、できないことを考えるより、まずできることをやっていけば何とかなるもんだな…と思います。
※1 AIBとはAmerican Institute of Baking(米国製パン研究所)の頭文字で、製造現場の監査活動を行っています。
※2 チャタテムシは粉にわき、雄雌がなくどんどん繁殖してしまう昆虫綱咀顎目のうち、寄生性のシラミ、ハジラミ以外の微小昆虫の総称。
―お世話になった人たちに恩返しをしたい
現在の配属先である新規事業本部は、「スナックやシリアルに続く柱をつくろう」と2020年4月に設立された本部で、公募でメンバーが選ばれました。私が応募した理由は「今のままの自分で会社のためになるのか?」と思ったからです。品証は専門性が必要なせいか、異動が少なく、このまま同じ業務に携わることが将来的に会社の役に立つのかどうか悩んでいました。思い切って手を挙げて良かったと思っています。
新規事業本部では、メンバーが各自で新規事業を考え事業化に向けて取り組んでいます。私は「FOOD for FACTORY」という工場従業員のリフレッシュを目的とした事業を考案し価値検証を続けています。工場と飲食店をつなぐプラットフォームサービスで、工場の駐車場に飲食店がフードトラックなどで出店し、従業員が自由に食品や飲料を購入できるという仕組みです。品質保証時代にお世話になった工場の方々に恩返ししたいという気持ちで立ち上げた事業です。この事業にたどり着くまでには品質保証時代の苦労が生きていて、当時上司だった現常務執行役員からよく「現場現物」と言われていて、「一緒に汗をかく」も同じことだと思うのですが、「何と言っているか」ではなく、「現場で現物を見て、何が分かるか」ちゃんと見なさいということで、事業をつくるのでも一緒だなと思いました。
というのも、工場で24時間従業員の動きを見るために張り込みしたのです(笑)。その時に、工場従業員は購買することでリフレッシュにつながるということに気が付き、この事業のきっかけがつかめました。「とにかくやってみる」と何とかなるのだなと。
工場でドーナツを購入する従業員
何度かテスト販売を行いましたが、工場の皆さんが喜んでくれるのを目の当たりに見られるのはやりがいを感じます。この事業を思いついた時は、品証時代にお世話になった方々に、ただただお返しをしたいと思っただけだったので、思った通りに喜んでいただいているというのは、何よりもうれしいです。実際にポジティブな反応もいただいています。
―今後の展望
「FOOD for FACTORY」が事業化できて、「昔このサービスなかったの?」と工場の方々に言ってもらうのが夢です。ただ、課題もあって、テスト販売を行っている栃木県は飲食店が多いのでやりやすいですけど、カルビーの京都工場など近くに飲食店が少ない場所ではどう展開するのか考えなければいけません。また、パッケージ化して利益が出るようなら一部を委託する、もしくはフランチャイズのような運営にするなど、考えなければいけないことはまだまだあります。
そして、自動化が進んで工場の形態も変わると、食事の提供方法も変わってくるかもしれません。今は「リフレッシュ」という観点でやっていますが、その変化に合わせて「FOOD for FACTORY」事業を基盤として、違う形で工場従業員の日々を良くすることができたら更にうれしいです。
お世話になった方々に不義理はしたくないです。そのうえでどうせなら仕事を楽しみたい。先ずは、「FOOD for FACTORY」の事業化を目指し、次に全国展開することを目標として今後も精進していきます!
カルビーグループの社内報から飛び出した「カルビトの流儀」はいかがでしたか? 次回も楽しみにしていてくださいね!