健やかなくらしを願って行う、私たちの社会貢献活動
カルビーの社会貢献活動は、全国各地の事業所において行われています。従業員自らの手で、率先して行われていることが特徴です。
企業の社会貢献活動は、一般的には本社リードで行われることが多いようですが、なぜカルビーでは、従業員が各地で率先して行い続けているのか。今回は、社会貢献委員会の委員長である田中宏和さんに、その理由を聞きました。そして様々な活動の中から、製造工場周辺の森林保全活動にスポットを当ててみます。
田中 宏和(たなか ひろかず)
カルビー株式会社 経営企画本部 社会貢献委員長 兼 渉外担当部長
1986年入社。営業、経営企画、広報部などを経て、2021年4月から現職。
さまざまな社会貢献活動を
従業員が自主的に行える仕組みとは?
田中:カルビーの社会貢献委員会は本社を含めて、全国各地の工場や支店などの事業所に組織されてます。それぞれの場所で委員長のリーダーシップの下、社会貢献委員が積極的に活動していることが、大きな特徴であり、強みだと言えます。
各事業所に組織されている社会貢献委員会からは、所属する従業員に宛てて、「来月はこのような社会貢献活動のメニューがありますよ」と参加者を募ります。社会貢献活動を行う時間や意思がある従業員は、そのメニューの中から選んで活動を行っています。
たとえば、始業前に実施している事業所周辺の清掃活動には誘い合って参加します。そのような時に、休日のボランティア活動や寄付などについて、言葉が交わされ、自然と情報交換されていきます。
自主的に社会貢献活動を行うカルビーのDNA
田中:私たちが社会貢献活動を自主的に行うバックボーンには、創業者の言葉「商売は人助け」および「未利用資源の有効活用」が色濃く影響しています。「かっぱえびせん」や「ポテトチップス」を開発し、発売するまでの苦労を乗り越えてきた考え方のことです。
企業活動を行うことはすなわち、「世の中のお役に立つ」ようでなければならないということです。現在の企業理念である「自然の恵みを大切に活かし、おいしさと楽しさを創造して、人々の健やかなくらしに貢献します。」や、グループビジョンにつながっています。
水源涵養機能の維持・向上を目指す森林保全活動
田中:本社の社会貢献委員会の役割は、ひとつの事業所だけではできない全社的な取り組みのバックアップです。東日本大震災の際に被災され孤児となった子供たちの高校卒業後の進学を応援する「みちのく未来基金」への支援活動は一例です。
一方で事業所では、すべての従業員が、ボランティアや寄付行為などを通じて、年に一度は「ひとり1活動」ができるような働きかけや、勉強会を行っています。
各地域でそれぞれまったく異なった活動を行っているかというと、そうでもないんです。ポテトチップスを製造している工場では、持続可能な水源涵養機能(すいげんかんようきのう)の維持・向上を目指して、現在全国4箇所の森林で、カルビーの従業員が保全活動を行っています。
本社 社会貢献委員会の3名
左から二宮かおるさん、田中宏和さん、八幡明子さん
大切な水源を守る
田中:ポテトチップスの製造工程では多くの水を使います。ポテトチップスの原料であるじゃがいもは土が付いた状態で入庫されるため、使用する前に多くの水を掛けて土を落としてから皮をむきます。皮をむいたじゃがいもを移動させる際には、太いパイプの中を水流で搬送することもあります。その後スライスしたものを、大量の水で洗ってからフライしています。
その水源となる森林土壌は雨水を貯め込みます。河川へ流れ込む水の量を平準化します。洪水を緩和し、川の流量を安定させる機能を持つほか、雨水が森林土壌を通過することにより、水質を浄化する働きもあります。
そして森林が成長すると、多くのCO2を吸収します。
カルビーの工場は、そういった森林土壌の恩恵にあずかっていることになります。
日本の森林の多くは、40年前まで植林と伐採の好循環が維持されていました。しかし、1980年以降には外国からの安価な木材輸入が著しく増え、伐採して運び出してもコストが合わないため、管理されず放置されたままの森林が増えてきました。
森林は間伐や枝打ちといった管理をしないと、枝だらけの細い木が密集した状態になり、太陽の光が届かず木々が成長できません。さらに、下草を生え放題すると栄養を奪われ、木の根も細く弱くなってしまいます。結果として、木の成長が止まってCO₂は吸収されず、土壌はやせて保水能力がなくなり、大雨のときに土砂崩れが発生する原因にもなります。
そこで、カルビーは、工場近隣の森林保護を行い、使用している地下水や、きれいな空気の持続的な利用を目指しています。また、その重要性を従業員に知ってもらうために森林保全活動を行っています。
間伐や枝打ちといった技術を必要とする管理は、そのコストを負担して森林組合などの専門家にお願いしていますが、下草狩りや植樹といった作業は、ボランティア活動として従業員が手伝っています。
森林全体への効果は小さいですが、このような活動を通じて、工場の従業員一人ひとりが環境や自然の恵みの大切さを知り、それを使う責任を強く自覚する機会になれば、と願っています。
【カルビーの従業員が森林保全活動を行っている森林】
・北海道支店、北海道工場:「カルビー・ミナミナの森」(北海道千歳市)
・清原工場、新宇都宮工場:「カルビー・とちぎ自然と恵みの森」(栃木県
那須烏山市)
・中部支店、各務原工場:「あいち海上(かいしょ)の森」(愛知県瀬戸市)
・近畿支店、湖南工場 :「カルビー・滋賀こんぜの森」(滋賀県栗東市)
北海道千歳市「カルビー・ミナミナの森」における森林保全活動
また、活動内容は異なりますが、カルビーにとって大切なエビのために、海水をキレイに保ちたいとの願いから、広島県が進める「GREEN SEA瀬戸内ひろしま・プラットフォーム」に参画しました。
こちらの活動としては、広島県内の事業所である中四国支店、Calbee Future Labo、および2箇所の工場の従業員が、海洋プラスチックの削減や海岸の清掃活動に協力しています。
Corporate Social Responsibility(企業の社会的責任)を学ぶ機会の提供
田中:社会課題を知る、学ぶ機会として社会貢献委員会では、CSR検定受験を推奨しています。テキスト代は会社負担で、受験料も合格すれば会社から支給されます。検定前には我々が手づくりで勉強会を開き、受験する従業員とともに模擬テストを解いたりして準備します。
2021年10月現在、合格者は1級1名、2級15名、3級78名にのぼり、食品業界ではトップクラスです。合格者からは、「良い学びになったのでもうひとつ上の級にもチャレンジしたい」とうれしい声をもらっています。
今後の課題と抱負
これからは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、以前のように多くの従業員が集まってボランティアを行うというスタイルは、変えていかなくてはならないと思っています。
在宅勤務でもできるボランティアや、自宅近辺で手軽に参加できる社会貢献活動の提案をするため、2021年8月にポータルサイト「ボランティア・ウェブ」と提携しました。全国のNPO団体が用意したボランティア・メニューのほか、従業員が自ら活動のアイデアを提案し、サイトを通じて語り合える場になればと思っています。
従業員一人ひとりが自分の身近にある社会や環境に注目し、CSRに関する知識を持って自発的に社会貢献活動を行うことで、誰もが暮らしやすいよりよい社会になることを願っています。
従業員が社会的弱者支援や環境保護のお手伝いを行うと、それまで知らなかったカルビーの外側の世界、自分と違う常識・価値観など、異質なものに触れることで、新しい発想が生まれ視野が広がります。想像力は豊かになり、違う視点で課題の解決策を見つけることができたり、従業員自身や会社の成長・発展につながったりします。
社会貢献活動はそんな従業員の可能性を引き出すものだと信じています。