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夢のお菓子、実現します。「お菓子コンテスト」を開催し続ける理由

子どもの頃、「もしもこんなお菓子があったら……」と、夢のお菓子を思い浮かべたことはありませんか。そんな夢のお菓子のアイデアを小学生から募集し、選ばれた作品を実際に再現するイベントがあります。年に一度行われる、カルビーの「お菓子コンテスト」です。

「お菓子コンテスト」は2011年にスタートし、先日、第11回目の表彰式を終えたばかり。今回は計692のアイデアが寄せられ、カルビーグループ社員のWeb投票により入賞作品を決定。上位2作品が社員の手によって再現されました。いったいどんな夢のお菓子が出来上がったのでしょうか。

なお、このコンテストにはもうひとつの特徴があります。それは、本社部門ではなく、宇都宮地区の社会貢献委員会が主体となって開催していることです。この記事では、その理由にも迫ります。

「お菓子コンテスト」の立ち上げに携わった研究開発本部 開発推進部 プロセスエンジニアリング課 課長の渡邊大助さんと、今年度のコンテストを担当した研究開発本部 開発4部 素材スナック課の藤井友菜さんに取材し、立ち上げの経緯や、「お菓子コンテスト」を行う理由を尋ねました。

渡邊さんプロフィール (2)

渡邊 大助(わたなべ だいすけ)
カルビー株式会社 研究開発本部 開発推進部 プロセスエンジニアリング課 課長
2006年入社。2009年~2016年まで長きにわたり「じゃがりこ」の開発を担当。2018年より現職。2011年~2020年、宇都宮地区の社会貢献委員を務め、「お菓子コンテスト」の立ち上げに携わる

藤井さんプロフィール候補4 (2)

藤井 友菜(ふじい ゆな)
研究開発本部 開発4部 素材スナック課
2019年入社以来、現職。主に「Jagabee」の開発を担当する。2020年より宇都宮地区の社会貢献委員会に加入し、今年度「お菓子コンテスト」の本担当を先輩から引き継ぎ、奔走している

692のアイデアの中から、再現された2作品は?

2022年1月23日、「お菓子コンテスト」の表彰式がオンラインで行われました。このコンテストは、カルビーの3拠点(新宇都宮工場、清原工場、R&Dセンター)がある栃木県宇都宮地区の小学校15校の児童と、この活動を支援する「特定非営利活動法人 放課後NPOアフタースクール」に所属する児童から、夢のお菓子のアイデアを募集するものです。

毎回、テーマが設定されており、今回のテーマは「もし学校にあるものがおいしいお菓子になったら」。692の作品が集まり、昨年7月から4度にわたって審査。最終審査では、全国のカルビー従業員798名がオンライン投票を行い、上位3作品、優秀賞、特別賞の計12作品が決まりました。

では、どんなお菓子のアイデアが選ばれたのでしょうか。見事1位に輝いたのは、安田夏葉さん(平石北小学校 第6学年)の作品『地球ぎグーミー』。地球儀を模したグミのお菓子で、大陸ごと違う味になっているというアイデアでした。

地球儀ぐーみー

安田さんの描いたイラスト(左)と、それを再現したお菓子(右)

おもしろいのは、グミの入ったトレイに「各大陸に関する問題」が書かれていたり、そのトレイは環境に配慮して100%再生プラスチックになっていたりという工夫です。

表彰式でこのアイデアについて尋ねられた安田さんは、もともと知育菓子などの“学べるお菓子”が好きなことや、普段からエコバッグを使っていて「環境にやさしいお菓子を作りたいと思った」ことなどを話しました。

2位になったのは、秋田真輝さん(泉が丘小学校 第6学年)の作品『のぼりこ』。これは、学校によくある「登り棒」と「じゃがりこ」を合わせたアイデア。1本の「じゃがりこ」で3つの味(とうもろこし、にんじん、えだまめ)を楽しめるということでした。

のぼりこ

秋田さんの描いたイラスト(左)と、それを再現したお菓子(左)

普段から「じゃがりこ」が大好きという秋田さん。カラフルな学校の登り棒を見て、このアイデアを思いついたそう。3つの味の中では「とうもろこし味が一番おいしそう」と、その味わいも細かく想像していました。

コンテストの運営を担当する藤井さんは、子どもたちの作品を振り返って「これだけ幅広いアイデアが寄せられたことにびっくりしました」と笑顔を見せます。

「『学校』という身近なテーマだったこともあり、自分の想いを乗せた作品が多かったですね。体育用具や黒板、チョーク、時間割表を使ったお菓子など、本当に多種多様で。出来上がった作品は一つひとつ個性が出ていて、見ているだけで楽しかったです」

「お菓子コンテスト」では、上位作品を実際に再現するにあたり、お菓子だけでなくパッケージまで考案するのも見どころです。毎回、研究開発本部のメンバーが作り上げます。

図1

今回の受賞2作品のパッケージ。細部までこだわりが光る

渡邊さんと藤井さんは今年、『のぼりこ』チームのメンバーとして試作品を作りました。再現されたお菓子を見たときの子どもたちの笑顔には「毎年元気をもらう」といいます。

コンテストを主催する理由と、譲れない2つのこだわり

2011年からスタートした「お菓子コンテスト」は、昔もいまも、カルビーの宇都宮地区の社会貢献委員が主体となって行っています。でもなぜ、本社ではなく、地域の社会貢献委員がこういった企画を立ち上げたのでしょうか。当時の立ち上げメンバーだった渡邊さんに、その経緯を聞きました。

渡邊さんインタビュー1 (2)

「やりたかったのは、地域への社会貢献です。カルビーでは、2011年に全社横断の社会貢献委員会ができました。そこから事業部ごと、どんな社会貢献ができるか考える中で、当時宇都宮地区で社会貢献委員を務めていた社員が提案したのが『お菓子コンテスト』だったんです」

渡邊さんが所属する研究開発本部の拠点・R&Dセンターは、栃木県宇都宮市の清原工業団地内にあります。日頃からお世話になっている地域の方に何かできないかと模索する中で「私たちはお菓子を開発する部門なので、お菓子作りを通して子どもたちや親御さんなど、この地域の方に楽しさを提供できればと考えました」と、渡邊さんは振り返ります。

こうして発起人の社員とともに、渡邊さんも立ち上げメンバーに。まずは、R&Dセンターのある清原地区の4小学校で行おうと企画しました。

「定期的に4つの小学校の校長先生が集う会議があり、そこにお伺いして企画を説明しました。どの小学校も快く引き受けていただきありがたかったです」(渡邊さん)

こうしてスタートした「お菓子コンテスト」の歴史。渡邊さんは、立ち上げ当時から「メンバーがこだわっていたことが2つありました」といいます。1つ目は「自分たちの手作りでコンテストを行う」ことです。

渡邊さんインタビュー3

「このコンテストの目的は、地域への社会貢献であり、それを通してR&Dの社員が地域の方々とつながることです。運営はすべて手作りにこだわりました。たとえば毎年、各小学校の先生や子どもたちに企画主旨の説明をさせていただくのですが、必ずカルビー社員がみずから足を運んでいます」(現在は新型コロナウイルス感染症拡大の影響でオンラインにて説明しています)

回数を重ねていくうちにコンテストの参加校は増え、現在は宇都宮市の15校と「放課後アフタースクール」が参加しています。対象はカルビー社員が足を運べる範囲、自分たちで行える規模に絞っているといいます。

もしかすると「なぜ宇都宮地区に限定しているんだろう」と不思議に思った方もいるかもしれません。このコンテストは、宇都宮地区の社会貢献委員がお世話になっている地域に向けて始めたもの。そこが出発点なので無理に規模を大きくしていません。

「もしコンテストの規模を一気に拡大すると、私たちだけではまかないきれず、手元から離れてしまい、地域との結びつきが薄れてしまうかもしれません。また、いっときの活動に終わらず、長く継続させたいという思いもあり、自分たちができる規模で続けてきたんです

立ち上げ当時のこだわりは、もう1つあります。それは、再現するお菓子のクオリティについて。第1回から入賞作品を再現する企画は行われてきましたが、その出来栄えにもこだわりがあったとのこと。

「カルビーが作るお菓子である以上、ひとつの製品として胸を張れる仕上がりにしようと決めました。家庭料理でできるレベルを超えて、子どもたちに感動してもらえるようにこだわってきましたね

だからこそ、お菓子の再現には長い時間を費やします。およそ3ヶ月をかけ、その間に試作を6〜8回、多いときには10回ほど重ねて完成します。

「お菓子のパッケージまで考えるのも、クオリティへのこだわりからなんです。今回のグミのように、カルビーの製品にはないジャンルのお菓子を作ることもあります。そのときは私たちも四苦八苦しながら作るのですが、それでも子どもたちがガッカリするものは作りたくありませんよね。出来上がったお菓子に感動してもらうからこそ、このコンテストが地域の方々の楽しみになるのですから」(渡邊さん)

オンラインの表彰式、子どもたちに楽しんでもらうための工夫

こういったこだわりの中で、「お菓子コンテスト」は続いてきました。2021年1月には、コンテストで生まれたお菓子を商品化。2019年度に1位に選ばれた『コロコロベジタブル』が数量限定で発売されました。

図2

『コロコロベジタブル』のイラスト(左)と、商品化したもの(右)。2021年1月にカルビープラス東京駅店、Calbee+オンラインショップで数量限定販売(現在は販売終了)

現在、「お菓子コンテスト」を担当する藤井さんが関わり始めたのは2年前から。ちょうどコロナ禍と重なり、表彰式や学校とのやりとりもすべてオンラインに。それでも楽しんでいただけるよう、さまざまな工夫を重ねてきたといいます。

藤井さんインタビュー1

「表彰式のオープニングではゲーム風のアニメーションを用意したり、途中で着ぐるみのキャラクターが登場したり。以前は、実際に再現したお菓子を子どもたちに食べていただいたのですが、いまはできません。それもあって、別の部分で楽しさを感じてもらえるようにしています」

表彰式では、試作品を作る過程をまとめた動画が流れるのですが、その内容も工夫を凝らしたとのこと。途中でクイズを混ぜるなど、なるべく楽しい雰囲気が伝わるようにしています。

20220123_お菓子コンテスト①

オンライン表彰式の様子。カルビーの伊藤社長も参加した

ここ最近は、子どもたちが学校に行けない日や、行事が中止になることも増えています。そんな中で、このコンテストが少しでも「子どもたちの楽しみや思い出になればうれしい」と藤井さん。

「特に今回のテーマは『学校』だったこともあり、教室や友達のことを考える機会になってよかったなと思います。作品を見ても、子どもたちが楽しんで考えている様子が伝わってきて、うれしかったですね

子どもたちのアイデアを見ることが、なぜ社員の刺激になるのか

地域に向けて行っている「お菓子コンテスト」ですが、巡り巡って子どもたちのアイデアはカルビー社員にとっても刺激にもなっています。それは、渡邊さんの言葉からもわかります。

「子どもたちのアイデアの中には、私たちが到底考えつかないような発想があるんですよね。大人はどうしても最初から『こういうことはできない』とか『商品化は難しい』といったバイアスを持って考えてしまう。でも、子どもたちはそんな制限なく、自由に発想するんですよね。だからこそ、子どもたちのアイデアが社員の刺激になっているんです

藤井さんも、子どもたちのアイデアに心を動かされることは多いとのこと。たとえば今回、惜しくも上位には残らなかったものの、個人的な“推し”の作品があった様子。

「私が好きだったのは『カラフル辞書のミルフィーユ』という作品です。辞書の形にチョコレートをカラフルにコーティングして、中のミルフィーユには「カルビー ポテトチップス」を使うというもの。辞書は教室にあるけど、読む人が少ないからもっと親しんでもらえるようにと考えついたそうで、その思いがすごくいいなと思いました」

室内集合

このように、社員の刺激にもなっている「お菓子コンテスト」。最後にこれからのことを聞くと、藤井さんはこんな願いを口にします。

「私が担当になってからはオンライン開催になり、再現したお菓子を受賞者に食べてもらうことができていません。早く子どもたちが実際に試食する姿を見てみたいですね

一方、渡邊さんはさらに先の未来を描いているようです。

「小さい規模でいいので、とにかく長く継続してほしいです。日々の仕事に加えてコンテストを行うのは大変ですが、続けることが地域への貢献になると思うので。そしていつか、このコンテストでお菓子作りに興味を持った子が、社会人になってカルビーに入ってくれたら……本当にうれしいですね

椅子集合3

地域貢献の思いで行われてきた「お菓子コンテスト」。この企画は、カルビー社員にとっても地域から力をいただく機会になっています。

1年、また1年と続けることを目標に。これからも“手作り”のコンテストを行いながら、お菓子を通して、地域に楽しさを伝えていきます。

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