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創業者が描いた理想のじゃがいもスナック~「Jagabee」はこうして生まれた

カルビー創業者・松尾孝が思い描いたスナックは、2006年「Jagabee」として誕生しました。じゃがいものおいしさにとことんこだわった「Jagabee」は、カルビーの代表作のひとつです。

2022年から商品のブランドマネージャーを務める山口ひとみさんに、発売の背景や商品に込められた思いを伺いました。

山口 ひとみ (やまぐち ひとみ)
カルビー株式会社 マーケティング本部 Jagabeeチーム ブランドマネージャー
2010年入社。財務、IR、営業支援等を経て、2017年にマーケティング本部、2021年より「Jagabee」を担当。

開発のきっかけはあの商品

まず、「Jagabee」が誕生した経緯を教えてください。

山口:
「Jagabee」を発案したのはカルビー創業者の故松尾孝です。松尾には、「じゃがいもの素材本来の味わいと食感を追求し、フレンチフライをそのままスナックにしたい」という信念がありました。そんな中、1995年に「じゃがりこ」が発売。「カリッ、サクサク」とした固さのある食感が人気を博して大ヒット商品となる中、松尾は自身の理想のスナックを実現しようと考えます。ここから、「Jagabee」の元となる商品の開発が始まります。

―創業者の思いが詰まった商品なのですね。開発のきっかけとなった「じゃがりこ」との違いはなんでしょうか。

山口:
製法がまったく違います。「じゃがりこ」は原料であるじゃがいもをスライスしてマッシュ状にしたものに、調味料を加え、成形してフライします。一方「Jagabee」は、じゃがいもまるごとを皮付きで短冊状にカットしてフライしています。1本1本の長さが不揃いなのも、じゃがいもをそのままカットしていることが理由です。

試行錯誤から生まれたじゃがいもスナック

―開発はどのように行われたのでしょうか。

山口:
商品が完成するまでには数々の試行錯誤があったと聞いています。上質なじゃがいもを大量に確保するために、開発担当者が直接アメリカに渡り、試作・評価を繰り返しました。当時、評価したじゃがいもの品種は、国内外で軽く100種類を超えていたようです。

また、「Jagabee」は発売前、2000年発売の「ナチュラルポテト」、2004年発売の「ほんじゃが」など、違う商品名でテスト発売を繰り返しています。今は北海道で定番のお土産となっている「じゃがポックル」も「Jagabee」開発の中で生まれた商品です。

今でこそ「皮つきじゃがいもスナック」として定着している「Jagabee」ですが、2000年に「ナチュラルポテト」として発売したときには「皮なし」を試したこともありました。しかし販売に苦戦し、翌年には「皮つき」に戻ったそうです。その後の調査で「皮つき」であることがお客様から高い評価を受けていた事が分かります。「皮つき」が素材感やナチュラルさにつながり、「Jagabee」ブランドの価値になっていることに気が付いたのはこのときです。

「Jagabee」の前身となった商品。左から「ナチュラルポテト」2品、「ほんじゃが」
※現在は発売しておりません。

―試行錯誤の末にたどり着いたのが「Jagabee」なのですね。商品名にはどのような思いが込められているのでしょうか。

山口:じゃがいもの「じゃが」とカルビーの「ビー」をかけ合わせて「Jagabee(じゃがビー)」という商品名になりました。表記を英語にしたのは、日本だけではなく世界のお客様にも楽しんでほしいという想いからです。英文字の商品名はカルビーでも珍しいのではないでしょうか。名前の通り、現在は海外でもたくさんのお客様に食べていただいています。

発売当時を振り返る

―発売当時の反響はどうだったのでしょうか。

山口:2006年4月に『Jagabee うす塩味』をコンビニで発売しました。当時、今までにない食感を手軽に楽しめることや、「じゃがりこ」以外ではまだ珍しかったカップ型の包装形態の目新しさで、大変ご好評をいただいたと聞いています。今でもお客様にインタビューをすると、発売当時のことを覚えている方がいらっしゃいます。

2006年4月発売当時のパッケージ

実はそのとき学生だった私も当時の「Jagabee」ファンのひとり。入社時にはいちばん好きな自社商品として「Jagabee」を挙げました。まさか自分がブランドマネージャーになるなんて思ってもいませんでしたね。感慨深いものがあります。

―「Jagabee」は包装形態も特徴的ですよね。

山口:はい。カップ型の「Jagabee」を発売した翌年の2007年には、個包装された商品がいくつか入ったボックス型もスーパーマーケットに向けて発売されました。ターゲットの20-30代の働く女性が部屋に置いても恥ずかしくない見た目、1袋100Kcal以下の適量をマイペースに食べられるよう設計されています。特徴的なキューブ状の形は「Jagabee」の資産のひとつにもなっています。

2007年10月発売当時のボックスパッケージ
2007年10月発売当時のボックス(5袋入り)のパッケージ

原点に立ち返って乗り越えた終売の危機

―そんな「Jagabee」ですが2020年にはリニューアルをしましたよね。

山口:そうなんです。実は2013年頃から戦略の方向転換と定番売り上げの減少が続き、2018年頃に販売継続の危機を迎えました。こうした状況を受けて、2020年に“Jagabee ReBORN”と銘打ち過去最大のリニューアルが行われました。このリニューアルは再起をかけたラストチャンスとされていました。

リニューアル当時のCMイメージ

―どのような点を変更したのでしょうか。

山口:リニューアルで大切にしたのは、「自然の素材そのままで、じゃがいも本来のおいしさを独自の食感で楽しんでいただく」という「Jagabee」ブランドの原点に立ち返ることです。

そのために、「Jagabee」のいのちともいえる「食感」を改善しました。製造工程を一部見直してバラつきを改善し、品質を向上させました。噛んだ瞬間はカリッ、続いてサクッホクッとした2段階の食感で、噛んでいるうちに口の中でほどけて、じゃがいもに戻っていくような感覚を味わえます。ぜひこの商品はゆっくり食べていただけたらと。噛み締めれば噛み締めるほど、じゃがいもの素材のおいしさを楽しんでいただけると思います。

―パッケージの雰囲気も大きく変わりましたよね。

山口:はい。自然な素材感を感じていただきたいという思いから、手づくりの温かい風合いを感じていただける木版画をパッケージに使用しています。余白を広くとり、多くを語りすぎないデザインは、余計なものを加えない素材のよさを表現しています。シンプルで落ち着きのあるトーンに統一し、ターゲットの大人の女性が自分のために手に取りたくなるパッケージを目指しています。

また、2022年には小袋のデザインを試験的に変更しています。ブランドキャラクターのポッタが「いつもありがとう」「応援しているよ」といったメッセージを語りかけてくれます。ささやかですが、食べた方が忙しい合間にほっこりとしていただけたら嬉しいです。シェアしやすい個包装なので友人や職場の同僚に気軽に贈っていただくこともできると思います。食べておいしいだけでなく、大切な方と笑顔を繋ぐ存在になりたいと思います。

小袋デザイン

―リニューアルの効果はどうだったのでしょうか。

山口:リニューアルを経て、リピート率も改善され、定番の売上げが再成長をはじめました。 “Jagabee ReBORN”は成功だったと言えると思います。

じゃがいもの可能性の広さを率先して伝えるブランドでありたい

―「Jagabee」の定番商品といえば「うすしお味」「じゃがバター味」「しあわせバタ~」ですが、期間限定の商品もありますよね。

山口:はい、じゃがいもを様々な角度からもっと楽しんでいただきたいという思いから品種、カット方法、フレーバーなどを変えて定期的に発売しています。

特に「Jagabee」ブランドの原点に立ち戻ることに重視したリニューアル後は、じゃがいも本来のおいしさを感じつつ、様々な食感による違いを楽しんでいただきたいと考え、カット方法を変えた商品開発に注力しています。ウェーブカットや細めカットなど、これからも発売予定なのでお客様に楽しんでいただきたいですね。

ウェーブカット
ウェーブカットの「Jagabee」

―最後に、今後の目標を教えてください。

スナックはにぎやかで元気なイメージのあるお菓子が多いですが、「Jagabee」は忙しく頑張る方々のちょっとした休息時間にゆっくり食べていただきたい商品です。食べていただく方のほっこりとしたひとときに寄り添えたらうれしいです。

これからも“じゃがいもの味がちゃんとする”という商品価値を守りながら、じゃがいもの可能性の広さを率先して伝えるブランドでありたいです。カルビー創業者から引き継がれた商品を大事に育て、次の世代に繋いでいきたいと思います。

編集後記

文:瀧澤 彩
写真:櫛引 亮

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