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改善活動を推進する工場長の仕事観【社内報より『カルビトの流儀#03』】

カルビーの社内報は1960年に創刊され、現在に至るまで60年以上にわたり発行されています。「かっぱかっぽ」からスタートし、「かるびー」「CALBEE」などと名前を変え、グループ報となった今は社内の連帯感を一層深め、永遠に幸せの輪がつながっていけばという想いを込めた「Loop」という名前です。その中の1つのコーナー「カルビトの流儀」は、仕事上でのほろ苦い経験を通じて得た気づきを基に個人の仕事観を紹介しています。(ちなみにカルビトとは、カルビーグループで働く人のことです)

この「カルビトの流儀」をnoteで公開していきます。

今回は、工場での改善活動を主業務として、カルビーはもとよりグループ会社工場の工場長も務めたTPM(Total Productive Maintenance)の猛者です。

社名前

葎口 康弘(むくらぐち やすひろ)                  カルビー・イートーク株式会社 管理部 部長              1981年にカルビー入社、ポテトチップス製造課に配属される。その後ベーカリー事業の立ち上げ経験などを活かしTPM・シックスシグマの推進に尽力する。2015年カルビーポテト株式会社帯広工場、2016年ジャパンフリトレー株式会社古河工場、2019年カルビー下妻工場の工場長を務め、2021年10月から現職。

―改善活動が業務の主軸

改善活動がもう、とても好きです。私の一番の武器とも言えますね。入社後に配属された鹿児島工場でTPM(Total Productive Maintenance)に携わりました。TPMは、機械をバラバラにして内部まで清掃し、問題個所の原因を探り対策することで、働く環境の改善、生産性の改善、従業員の意識改善にもつながります。

当時カルビーはTPM活動をどの工場もやっていたのですが、鹿児島工場は早い段階からやっていて外部団体が主催する審査でTPMの優秀賞を取ったのです。その流れで茨城県にある下妻工場もTPMの優秀賞を狙いたいので下妻へ手伝いに行けというので行きました。下妻工場が無事にTPMの優秀賞を取ると、今度はそのときにカルビーがパン事業を立ち上げる計画があり、それまでの経験を活かしてパン事業の会社であるガーデンベーカリーに行ってくれと言われました。ガーデンベーカリーの話はまた後でします。


現場時代のTPM活動は、自分の職場だけの作業効率とか品質向上とかで、自分が頑張っただけ結果が出て、現場が変っていくのは楽しいものでしたが、推進する側となり、どうやって現場の人達にやる気を出してもらって、行動させるかという難しさはありました。

また当時は、TPMの継続賞・特別賞と上のランクへチャレンジしていたので、画期的な活動というレベルにふさわしい内容でなければなりませんでした。そこで、テーマも一緒に考え、高い目標をかかげました。当然事務局としては言いっぱなしではなく、きちんとフォローする必要があり、現場へ入り込み活動するということもちょこちょこあり、結構ハードでしたね。

この時に学んだのは、まずは行動すること、失敗を恐れて行動しなければ、何も変わらない。今でも迷っている時は、自分にこの言葉を言い聞かせています。この時代の取り組みが認められたのか、次は生産本部に呼ばれて全社のシックスシグマ推進もやることになり、まさしく改善が我が天職という感じになっていきましたね。

トーク中

―カルビー初となるパン事業立ち上げの苦労

改善活動一色という感じですが、下妻工場でのTPM応援が終わると、ガーデンベーカリーの立ち上げに呼ばれました。この立ち上げが始まると文字通り“地獄”だったのですよ…。

カルビー初のパン事業で経験や知識のある人が誰もいませんでした。立ち上げスタッフはいろいろなパン工場へ研修に行き、後から雇用した従業員も当然研修に行きましたけど、良いパンがつくれないのです。職人技の世界ですからね、すぐに習得するのは難しいのですよ。でもビジネスは待ったなしでした。上手くつくれない、トラブル多発、従業員はどんどん辞め人のスキルも上がらない、負の連鎖が始まっていきました。すると、リカバリーのために残業が発生します。当時はもともと12時間勤務でそこから残業が始まるので家に帰ることもできず、夜中に納品先から連絡があり商品に対して「品質が悪い」と指摘され謝りに行ったこともありました。心身ともに病んでいきましたね…。さらに従業員が辞めていき、残った人は自分に負担がかかると不安になっていきます。私もギリギリのところでやっていて、体重が2カ月で10キロ減りました。

なんとか負の連鎖を断ち切ろうと、核となる従業員を会議室に集めて緊急ミーティングを行いました。とにかく不安な人たちを安心させないといけないと思い、安心させるための材料をいろいろと話しました。

このミーティング後から少しずつ現場の雰囲気が落ち着いてきたのです。従業員のスキルアップとともに商品の品質も向上してきました。パンに挟むクリームひとつ絞るのでも、入ったその日からきれいに絞れるわけではないのです。1ヵ月ぐらい経ってようやくクリームを上手く絞れるようになり、4~5ヵ月経って全体的なレベルが上がり不良品が少なくなって生産が安定していく、そういう流れですよね。従業員も学習してノウハウがつき、いろいろな知恵もついてきますから、少しずつ良くなっていきました。

私ひとりが頑張ったところでたかが知れています。皆が前を向いて仕事をしてくれないとボロボロになると痛感しましたね。逆に仲間やチームや組織が一致団結していくとものすごいパワーになっていくことも実感しました。

ムックと一緒にガッツポーズ

カルビー・イートークのスタッフたちと(最前列右から4番目が葎口)

―「謙虚な姿勢」で人と接する

まさにTPMの活用であり人材育成がカギでした。どうやったら皆のやる気が出て前向きに動いてもらえるか…。どの職場でも、あるいはプライベートでも重要なテーマですけど、「謙虚な姿勢」が大事だということに気が付きましたね。きちんと話しをして進めないと物事は動いていきません。そのときに上から目線ではなく「謙虚な姿勢」でいかないと伝わるものも伝わらなくなってしまいます。謙虚な姿勢で接すると、相手が自然といろいろな話をしてくれます。相手の状況が分かると、お互いが納得できる地点が見えてきますから。

―今後の展望

今年の10月から配属となったカルビー・イートークは、障がい者を多数雇用しているカルビーの特例子会社です。大きな会社ではないので、1人なん役もやることになります。デスクワークより現場で体を動かしている方が好きなので、苦にはなりませんね。

これからは、障がい者一人ひとりが成長するために何をするか、また現場が良くなるために何をするか。今後も現場の意見を吸い上げて改善していきます。経営的なところでいくと、何をすれば会社が成長するか。経営者目線で、どういう投資・施策・行動をするかは常に考えています。イートーク成長のために、これまでの経験を活かしていきたいと思います。

現場トリミング

カルビー・イートークの現場で

入社してからずっと何らかの改善活動が身近にありました。振り返ってこのような活動に携われたことを、本当に会社に感謝しています。改善活動がなければ、今ここにはいなかったかもしれません。前所属先の下妻工場では小集団の改善活動をやっていますが、各チームの指導会の時間になると自然と自分がイキイキとしていることが分かるのですよ。自分で気になったことをどんどんしゃべってしまって、他の人にしゃべらせないほどです。本音を言うと話すことは得意じゃないのですけどね(笑)。


カルビーグループの社内報から飛び出した「カルビトの流儀」はいかがでしたか? 次回も楽しみにしていてくださいね!

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!次の記事もお楽しみに