カルビー次世代型スマート工場「せとうち広島工場」の萌芽*
「2037年の未来人につなぐ、カルビー創業の地、広島でつくる次世代型スマート工場」でお伝えした、カルビー新広島工場建設のプロジェクト。
新工場の名称は「せとうち広島工場」に決まり、いよいよ本格的に建設が始まりました。ようやく地上に出てくるこの新工場の“芽”をぜひご覧の皆さんにも愛でていただけたらと、「次世代生産プロジェクト」を率いる大野さん、そして本件に関わる社外の皆さんのお話をお届けいたします。
*萌芽(ほうが)=芽がでること。植え付けたジャガイモの種芋から芽がでる
―新工場の名称は「せとうち広島工場」に
大野:あっという間に起工式の日を迎えました。工場の名前は「せとうち広島工場」。カルビー創業の地、広島県から新たなカルビーを発信していきたいと想いを込めました。そして瀬戸内海から日本各地、世界につながっていきたいと考えています。
前回の記事で、プロジェクトの内容はお話しましたが、まだ土地は更地の状態でしたね。これからいよいよ工場の建物部分の建設が始まって外側からも状況が見えるので、私たち自身もさらに身が引き締まる思いです。
大野:起工式にはカルビーだけでなく、広島県、広島市、設計・施工を担当されている株式会社竹中工務店と様々な方にご列席いただきました。工場建設は多くのご協力あってこそ実現できる一大プロジェクトです。
私たちの目指す次世代型スマート工場の実現には広い用地と最新鋭の設計施工、アイデアがなくては成り立ちません。
―広島県 企業誘致担当と「せとうち広島工場」
―広島県とカルビーは包括的連携に関する協定を結ぶなど、たくさんのご縁があります
奥野:はい、このたびは新工場建設のご縁もいただき、うれしい限りです。やはり広島人は“カルビーは広島”と思っていますから。
細田:長く企業誘致に携わり、本件も情報交換させていただいていました。昨年度で退職しましたが、子どもの頃からカルビーさんのスナック菓子を食べているのでずっと一緒にいる会社ですよ。
―企業誘致のお仕事とは?
細田:そうですね、企業があれば、そこに人が集まり地域が活性化します。休遊地や造成地などの条件を整理し企業の担当者の方と日頃から情報交換、どんな条件を望まれているかを伺いマッチングしていくのが仕事です。
カルビーさんが土地を探しているというお話を伺って、私たちとしてはぜひ広島でと考えていましたが、なかなか条件にあう土地が見つからず、数年が経過していました。
―カルビーの条件とは?
細田:食品工場ですのでまず土壌の基準、最新鋭の工場を目指されるとのことで広い用地、そして馬鈴薯を運ぶ船が着ける港に近いことが大きな条件でした。
その後、県の港湾管轄の造成が決まり2020年に公募がある分譲地の情報が入り、これはカルビーさんの求める条件にあっているのではとお声かけしました。
―「せとうち広島工場」へのご期待は?
奥野さん・細田さん:最先端の工場がカルビーと広島の絆を一層深めることと思います。竣工と操業を楽しみにしています。
―設計・施工を担う株式会社竹中工務店と「せとうち広島工場」
―大きな工場の設計・施工、どんな風に進んでいるのでしょうか
山岡:今回はカルビーさんから「最新鋭のスマート化された工場」とお声かけいただきました。数々の工場建設の経験がありますが、この規模の食品工場はなかなかありません。またカルビーさんの解決したい課題がとても具体的でしたので、それに対して我々も持っている知見を出し切りたいと思いました。
建築物の設計はもちろんですが、製造工程の自動化、水やエネルギー、廃棄物の処理、脱炭素などテーマは多岐にわたり、私たちにとっても大きな工場建設プロジェクトです。
寺谷:通常は建築設計を担当する私が全体の責任を担うのですが、今回は先ほどのお話しの通り、規模だけでなく様々なテーマが複雑に絡むので、建築の骨といわれる設計は私、血管や神経といわれる機械設備とプロジェクト全体を山岡が見ています。水の担当、熱の担当など細分化した分野の担当もいます。
栗原:私はマテハン担当です。マテハンとはマテリアルハンドリングの略称で、物の動き・流れのことです。工場内の自動化を担当します。ちょうど自分のアイデアが膨らんでいるところにお話をいただいたので、事前の検討会では存分にご説明させていただきました。
―食品工場のスマート化とは?
山岡:私はホテルの厨房などの設備設計もしてきました。料理長が違えばレイアウトや使う道具も変わるように、食品製造のノウハウや製造ラインはその会社にしかないオリジナルです。
ですので、まず商品とその作り方を理解するところから始まりました。カルビー商品に詳しくなりましたよ(笑)。
また廃棄物削減と脱炭素について、私たちも想定で動くことが多いのですが、カルビーさんが他工場の取り組みで得られた知見がとても参考になっています。
栗原:今回チャレンジするのは“多品種大量生産”です。物流も自分が今まで経験したことのない量と早さです!ポテトチップスは約20分で製造して箱詰めされるとは驚きでした。
寺谷:工場の自動化だけでなく人の働きやすさも意識しました。働く人の環境づくりはどの企業も目指しているところだと思います。
例えば休憩スペースは仕事の合間の瞬間の居場所を作りたいなと思いました。最近はスマホを見ながら一人でくつろぐ方が多いですが、すぐそばにある瀬戸内の美しい風景を再認識できるといいなと、窓際にそんなスペースをレイアウトしました。
―いよいよ「せとうち広島工場」の地上部分の建設が始まります
山岡さん・寺谷さん・栗原さん:はい、第1期、そして第2,3期と長いおつきあいになります。長期プロジェクトの良いところはその時点での新しい物や技術を取り入れられることです。進化し続ける工場を作っていけたらと思います。
―「人と地球の笑顔をつくりだす、未来を形にする工場」に向かって
大野:あらためて創立記念日のある4月に創業の地広島で新工場の起工式を迎えられたのは意味を感じますね。「せとうち広島工場」から皆さんに商品をお届けできる日を楽しみにしていただけたらと思います!
文・写真/伊藤奈美子