5年間名無し!? 公募で名付けられた「じゃがビー」の「ポッタ」
「吾輩は妖精である。名前はまだない」
そんなミステリアスな状態でしばらく過ごしていたのが、「Jagabee」(じゃがビー)のマスコットキャラクター「ポッタ」です。
キュートな見た目でファンを癒し続けるじゃがいもの妖精ですが、実は名前が決まったのは誕生から約5年後、公募によるものでした。
なぜ、最初から名前をつけなかったのかーー。
この謎を解くため、キャラクターの生みの親、網干弓子さんに誕生秘話を聞きました。
「じゃがビー」のキャラクターが妖精になった日
「フレンチフライをそのままスナックにしたい!」
そんな想いで創業者の故・松尾孝が手掛けた最後の商品「じゃがビー」。
完成までにはたくさんの試行錯誤があり、「ナチュラルポテト」や「ほんじゃが」など、異なる名前でテスト発売を繰り返しました。
しかし、これらのテスト商品にはキャラクターは見当たりません。
「ポッタ」が初めて登場したのは、2006年4月の初代「じゃがビー」。
カップ型パッケージの中央とフタにその姿が確認できます。
では、なぜこのタイミングで「ポッタ」が登場したのでしょうか。
「テスト販売を終え、満を持して『じゃがビー』の名で全国展開を目指すことになりました。ターゲットは20~30代の女性で、特に一人暮らしの女性が帰宅後にほっとする時間を過ごすお供にしたかったんです。そこで、癒しを感じてもらうためにキャラクターを採用することにしました」と、網干さんは当時を振り返ります。
実は、最初から「ポッタ」のデザインが決まっていたわけではありません。
当初はポテトをモチーフにした女の子や、帽子をかぶった英国紳士風キャラなど、さまざまなデザインを検討していました。しかし、調査の結果、それらのキャラでは「じゃがビー」の目指すHappee(ハッピー:Happy+Jagabeeの造語)な世界観と癒しの役割が果たせないことが分かったのです。
そこで、キャラクターの立ち位置を再考し、2回目のデザイン候補として登場したのが、現在のじゃがいもの妖精でした。
網干さんは「見た瞬間にこの子だ!と思いました。他のデザインは、なんだかしっくりこなかったんです。社内の意見は分かれましたが、私が決断しました」と語ります。
「みんなで育てたいから」 あえて“名無し”に
じゃがいもの妖精として晴れてデビューした「ポッタ」ですが、名前が付けられたのはずっと後のことでした。当時のプロフィールにも名前は「まだない・・・」の記載があります。
「なかなかピンとくる名前が見つからず、最終的にはお客さまに決めてもらうのがベストだと考えました。『じゃがビー』が全国に浸透したタイミングで公募しようと。商品とともにキャラもお客さまに育てていただきたかったんです」(網干さん)
「じゃがビー」は2006年4月に西日本のコンビニでカップ型の販売をスタート。翌年にはスーパーマーケット向けに個包装が5袋入ったボックス型も発売しました。反響は予想以上で、供給体制を整えるのに時間がかかり、カップ型とボックス型が全国展開を果たすまでに約3年半を要しました。
その間、「ポッタ」は「キャラクターを通してお客さまの生活に寄り添えるブランドを目指す」という理念のもと、名前なしで活躍を続けました。
「じゃがビー」初のCMソング「happee song」のCDジャケットに登場したり、ぬいぐるみとしてグッズ化されたりして、少しずつ認知度も高まっていきました。
ちなみにぬいぐるみの商品名は「じゃがビー・ぬいぐるみ」で、社内では「じゃがビー君」と呼ばれ、「早く名前をつけてあげて」という声も上がっていたそうです。
3万件の応募で選ばれた「ポッタ」 その名付け親は?
2010年、「じゃがビー」の全国展開を記念し、ついに“Jagabeeキャラクター名付け親大募集!”キャンペーンがスタート。キャラクターのデザインとコンセプトを踏まえ、自由に名前を公募するもので、ブランドのウェブサイトとハガキで募集しました。
当時は、ゆるキャラやご当地キャラが流行しており、公募でキャラクターの名前を決める例も多くありました。目標の応募件数は5,000件でしたが、ふたを開けてみると、その6倍、約3万件もの応募が集まりました。
「予想以上にたくさんのご応募を全国からいただきました。『じゃがビー』が愛されていることを実感しましたね。すべてに目を通すのは大変でしたがとても楽しい作業だったのを覚えています」と網干さんは回想します。
その中から12案に絞り、デザイナーや全国各地の従業員などを交えて最終選考会を開催。その結果、名前が「ポッタ」に決まりました。
実は「ポッタ」の応募は複数ありましたが、名付け親に選ばれたのは、福岡県の親子でした。命名の理由は「ポテトのポをとって、『ホッとする』『ホのぼのとした』イメージからポッタにしました」とのこと。
網干さんは「『じゃがビー』のイメージにピッタリで、名前から親しみやすさを感じられました。オシャレすぎず、子どもからお年寄りまで幅広い層に愛される、呼びやすい名前だったのも理由の一つです。キャラクターを通して、お客さまに寄り添うブランドでありたいという想いが、『ポッタ』の名前に集約されていました」と選考理由を明かしました。
国内外で、「じゃがビー」とお客さまをつなぐ存在に
ようやく名付けられた「ポッタ」は、いまや「じゃがビー」に欠かせない存在です。
「ポッタ、はじめての家出」と題したウェブ動画の主人公になったり、「じゃがビー」が販売されている中華圏でも人気を博したりと、その活躍の幅はどんどん広がっています。
社内でも「ポッタ」の人気は絶大。ぬいぐるみは各地の工場の玄関でお客さまを出迎えたり、本社では社長が留守の時に椅子で留守番していたりと、“カルビーを代表する”キャラクターとなっています。
名無しの妖精から、世界にその名を広げている「ポッタ」。最後に、生みの親である網干さんに今後の期待を聞くと、目を細めてこう語りました。
「これからもブランドのメッセンジャーとして、国内外のお客さまと『じゃがビー』をつなぐ役割を担ってほしいですね。『ポッタ』の活躍を見たり、聞いたりすることが、私にとってもすごく力になります」
文、写真:櫛引亮
▼「じゃがビー」の開発秘話は下記のストーリーをご覧ください。