日本初!袋入りポップコーン誕生から65周年
実は「かっぱえびせん」よりも歴史のあるカルビーグループ商品が存在することをご存じですか?映画館やテーマパークで食べる機会が多いポップコーンですが、袋入りで販売した「マイクポップコーン」は今年で発売から65周年を迎えます。今回は、ジャパンフリトレーマーケティング部の大濵貴子さんと開発部の山本剛優さんにロングセラー商品に携わることのやりがいや苦労、今後の展望についてお話を聞きました。
「マイクポップコーン」が日本に根付いたのは味付けに秘訣あり?!
―1957年に国産初のポップコーン企業として設立した「マイクポップコーン」について教えてください。
大濵:1950年代後半の日本は、1956年初の東京国際見本市開催をきっかけに、海外の技術を積極的に取り入れ、復興する日本の産業を世界に発信する時代に突入しました。そんな中、1957年、アメリカの機械と原料、製造ノウハウを導入して、国産初のポップコーン企業として設立されたのが「マイクポップコーン」です。企業名と同じ「マイクポップコーン」のブランドでの製造販売を開始しました。
その後、1970年代には他メーカーもポップコーン市場に参入し、塩味やバター、キャラメルなどのフレーバーで展開していましたが、なかなか浸透しなかったようです。そんな中「マイクポップコーン」ブランドの転機となったのは、1983年に発売した「マイクポップコーン バターしょうゆ味」です。日本人が大好きな香ばしい香りとバターのコクとしょうゆのしょっぱい味付けで、現在も愛されるヒット商品となりました。
ポップコーンは食物繊維たっぷり。そして他にも価値が
―ロングセラーである「マイクポップコーン」ですが、担当になってからどんな取り組みをしてきましたか?
大濵:ポップコーン市場はまだまだ限られています。2010年代にポップコーンブームがあって、キャラメル味の商品が大きく伸長しましたが、バターしょうゆ味を代表とするソルト系の売り上げは変わりませんでした。2017年に定性調査をしたところ、「ポップコーンは映画館やテーマパークで食べるものという印象が強く、日常のおやつになるイメージがない」「空気みたいに軽く、食べ応えがないイメージ」などコメントをいただきました。そこで、他のスナック菓子にはないポップコーンらしい価値を伝えていくことにしました。2018年6月にはレタス約2個分の食物繊維※1が含まれているアイコンを入れたパッケージにしました。
※1 レタス可食部 215g=1 個として計算しています。(レタスの結球葉 100g 中の食物繊維は 1.1g)「日本食品標準成分表2020」より算出
パッケージやイベントで食物繊維が豊富であることを訴求したことで、20~40代の女性の方の購入が増えました。また、2019年3月から「マイクポップコーンの豆」を発売しています。できたてのポップコーンに、おうちにある調味料でオリジナルの味付けをしてもらうのがコンセプトの商品です。豆は通常、乾物コーナーに並んでいるため、売り場が見つからないという声がありました。そこで、「マイクポップコーンの豆」は「マイクポップコーン」と同じパッケージデザインにして、できる限りスナック菓子コーナーに置いてもらえるように売り方を工夫しています。コロナ禍を経て、ご家族で料理する機会が増えたことで、売り上げが伸びています。
できたてのポップコーンに、おうちにある調味料でオリジナルの味付けをしてもらうのがコンセプトの商品です。ほかにも映画や動画を見ながら楽しんでいただく「おうちシアターパック」を出しています。
―65周年を迎える今年はどんな取り組みをしていきたいですか?
大濵:ジャパンフリトレーでは、2022年に新たなブランド戦略「Valuety Snack(バリュエティスナック)」を打ち出しました。これは「バリュー(価値)」+「バラエティ」を組み合わせたものです。新たな価値をプラスすることで、3つのテーマで商品をシンカさせていきます。
1つめは、やみつきになるおいしさにカラダ想いをプラスした「fine snack」。2つめは、おやつの食シーンの枠を飛び越えた軽食やサラダにも利用してもらう「snack food」。3つめは、遊び心や気分転換の価値を進化させていく「the snack」。
この「fine snack」と「snack food」の要素を持つポップコーンは、より身近に、おうちで楽しめる商品展開にしていきます。
―食物繊維のほかにも、ポップコーンならではの価値もあるのですか?
大濵:2018年当時、食物繊維以外で魅力的な価値がないか文献を調べていたところ、ポリフェノールの一種であるフェルラ酸の値が高いということがわかりました。フェルラ酸には抗酸化作用や脳機能改善などの効果があり、最近では軽度のアルツハイマー病の症状改善についても注目されています。2019年から社内でも基礎研究を山本さんに担当してもらい、2021年にようやくパッケージ表記できるようになりました。
山本:とうもろこしの種類はたくさんあります。普段よく食べるのはスイートコーンですが、コーンスターチの原料になるデントコーンやもちもちとした食感が特徴のワキシーコーンなどあります。その中でも群を抜いてフェルラ酸の数値が高かったのがポップコーン(爆裂種のとうもろこし)でした。2.5~3倍ぐらいの含有量がありました。とうもろこしを主原料にした商品はたくさんありますが、加工の仕方でフェルラ酸の数値が下がります。というのも、皮の部分にフェルラ酸は多く含まれています。加工のしやすさや食感のためにとうもろこしの皮を取り除いているからです。それに比べ、ポップコーンはフェルラ酸を多く含む皮ごと加工して食べる、いわゆる“全粒穀物”なのです。まさにフェルラ酸摂取においてポップコーンは非常に有効な食べ物ということがわかりました。
フェルラ酸はイネ科の穀物に含まれることは知られています。米ぬかを使ったサプリメントも市場には出ていますが、日常生活でフェルラ酸を摂取する商品はありません。摂取源としてポップコーンが有効ではないか?と仮説を立て研究しています。ポップコーンのリーディングカンパニーで、ポップコーンの第一人者として、この仮説を証明したいと思っています。
誰もが食べる身近な商品として、ココロもカラダも満たすブランドへ
―ポップコーンにはまだまだ知られていない可能性が秘められていることがわかりました。今後、目指す姿を教えてください。
山本:現在、認知症改善ができるか細胞レベルで研究し始めました。また、ポップコーンを食べて便通が良くなると個人的に実感することもあります。体の中でポップコーンがどんな作用をしているか、ポップコーンの全成分の動きを追いたいと思っています。「ポップコーンは未来に輝くおやつかもしれない」とお客様に思ってもらえるまでの成果を発表したいですね。
大濵:健康意識の高まりや手軽に食物繊維を摂取したいニーズを、スナック菓子ならではの手軽さでお応えしたいですね。その選択肢としてポップコーンを選んでもらえるように、今後も価値訴求していきます。
当面の目標としては“もっと身近に、おうちの中での楽しみのそばに”をテーマにしていきます。ポップコーンは、「こんなにもすごいじゃん!」という魅力をたくさん持っています。それらをお客様に知っていただければ嬉しいですね。おうちでの楽しみのそばにポップコーンを。おいしさと素材本来の価値で、ココロもカラダも満たしていただける商品だと思っています。
『マイクポップコーン』ウェブサイト
http://www.fritolay.co.jp/ourbrands/mike/
『マイクポップコーン』公式Twitterアカウント
@mikepopcorn_JP
文:町田 有希
写真:櫛引 亮